竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi
第59号(2007年7月5日)【MotoGP】ロッシvsストーナー〜接戦のイギリス、オランダGP
125ccクラス22台、250ccクラス26台、MotoGPクラス4台。
第8戦イギリスGPの初日(金)に転倒した各クラスのマシンは、この日だけで、のべ52台を数えた。第8戦イギリス〜第9戦オランダ、と続くこの2連戦の開催地は、ともに天候の不安定な土地で、ドニントンパークもアッセンも、レースウィークのどこかで必ず雨が降ることは関係者ならとっくに折り込み済みの事柄である。
しかも、ドニントンパークはただでさえすべりやすいコースとしてつとに有名なサーキットだ。近郊のイーストミッドランド空港を発着する飛行機がサーキット上空を通過する際、燃料が空から降ってくるためにすべりやすいのだ、という説が昔からまことしやかに囁かれているが、その真偽はともかくとしても、たった1日で52台という転倒数は尋常な数字ではない。
この結果を受けて、同日夕刻に行われたセーフティ・コミッションのミーティングでは、あまりにもすべりやすい路面が議題として取り上げられることになった。
セーフティ・コミッションは、2003年鈴鹿で発生した事故を契機に発足した安全協議組織だ。選手たちが中心となって、FIMやDORNAの代表者、サーキットオーガナイザーたちも同席し、意見交換が行われる。当該サーキットの翌年に向けた安全性をさらに向上させるため、毎戦、金曜日の午後に開催されている。
発足当時の選手側代表者はバレンティーノ・ロッシ、ロリス・カピロッシ、青木宣篤、ケニー・ロバーツJr.、セテ・ジベルナウ、というメンバーだったが、2007年第8戦段階での選手側代表者は、ロッシとカピロッシの2名になっている。
そこで話し合われた内容について、ロッシは土曜に以下のように説明した。
「新しく再舗装されてからまだ3年だから、路面に問題はないはず。個人的な意見を言うと、去年ここでマリリン・マンソンがライブをやっただろ。あれがどうも怪しいと睨んでるんだ」
そう言って軽く笑いをとったあと、
「水はけの悪い場所があるのが、原因のひとつになっているのかもしれない。来年に向けて、そこを改善してもらうよう、サーキット側にリクエストしようと思ってる」
と指摘するにとどめた。
日曜日は朝から雨が降り続き、ウェットコンディションのなか、決勝レースが始まった。ブリヂストンはここでも圧倒的な強さを見せ、ケーシー・ストーナー(ドゥカティ)が後続を大きく引き離して今季5勝目。ミシュランを履くロッシは表彰台も逃し、4位でレースを終えた。
次戦のオランダも、雨から晴れへと数時間ごとに天気がめまぐるしく変わる“ダッチ・ウェザー”に翻弄された。だが、このサーキットはドニントンとくらべものにならないほどグリップレベルが高い。似たような悪天候でも、こちらの転倒者は三日間合計で28。この数字を比べるだけでも、ドニントンのすべりやすさは一目瞭然だ。
さて、雨が降り続くなか行なわれたオランダ・アッセンの予選では、トップファイブをブリヂストン勢が占拠し、またもや圧倒的な強さを見せた。4列目11番グリッドからのスタートとなったロッシも
「レインのセットアップが全然進んでいない。明日が雨なら、最悪だ……」
と珍しく気弱な言葉も吐いている。
だが、決勝日は一転してドライコンディション。
レースは序盤からロッシとストーナーの一騎打ちとなり、ストーナーの背後にロッシがピタリとつける展開で周回が進んだ。が、ラスト3ラップを目前にした最終シケイン進入でロッシが前に出ると、一気に突き放しにかかり、久々に見せた圧勝劇で今季3勝目。これで、6月に開催された4レースは、ロッシ2勝、ストーナー2勝となった。
しかも、6月4連戦の緒戦となったイタリアGPの際に、ロッシは
「ここからの4レースをどのように戦うかが、シーズンを左右する鍵になる。ここでできるだけポイントを稼いで、トップとの差を詰めたい」
と語っていたのだが、この4連戦の成績は、ストーナー(4位−1位−1位−2位)、ロッシ(1位−2位−4位−1位)で、ふたりの獲得ポイントはともに86点。4連戦前の21ポイント差は詰まっていない。この点差は「引き離されなかったロッシに有利」なのか、あるいは「リードをキープできたストーナーのアドバンテージ」となってくるのか。
今季はタイヤパフォーマンスが勝負を左右するレースが多いが、そのタイヤパフォーマンスを例年以上に気象条件が大きく左右しているだけに、今後の趨勢はまったく予測しようがない。あるいは、選手同士の全力の勝負とはきっとこのような状態を指すのではないか、という気もする。
というような事態を前にして、今後の成り行きは神のみぞ知る、といってしまうと、なんとも安易で思考停止な言葉にも見えるが、今のストーナーとロッシの戦いは、まさにそうとしかいいようがない。こんなやつらのこんなバトルを前にして、今後の予想を軽々に口走るほうがむしろ安直な行為なのだ。







