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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi

第57号(2007年5月10日)【MotoGP】ブリヂストン勢、上位をほぼ独占〜タイヤ戦争

第3戦トルコと第4戦中国で、ブリヂストン(BS)が圧勝を飾った。

第3戦はケーシー・ストーナー(ドゥカティ)の優勝を筆頭に、6位までを独占して8位と9位にも入り、合計7台のブリヂストンユーザーがベストテンを占拠した。第四戦でも再びストーナーが優勝。以下3位、5位〜9位を独占し、ベストテン以内でまたもや7台を占めた。タイヤ界の大巨人、ミシュランを向こうに回して堂々の圧勝ぶりだ。

この大勝利には、今年から変更されたタイヤレギュレーションも大きく影響している(概要はバックナンバー1月26日付けコラムを参照)。この措置により、ミシュランは、土曜までに得たデータをもとに決勝用のテーラーメイドタイヤを製作する“C3M”という秘密兵器を使えなくなった。

その一方で、BSは別働隊のテストチームを動かして各サーキットのデータを収集することが不可能になっている。規制の内容的には、事実上の両者痛み分け、という格好だ。

「タイヤレギュレーションの関係で、ここではミシュランも事前にテストをしていなかったから、今回は向こうがはずした、ということになるんでしょう」BSモーターサイクルレーシングマネージャーの山田宏氏も、新レギュレーションがレース結果に影響したことを認めている。

「とはいっても、同じことが次回以降の私たちにも起こりえるわけです。このサーキットは、自分たちの三大ワースト(トルコ、ドニントン、ポルトガル)のひとつだっただけに、勝てる自信を持っていたわけではありません。レースシミュレーションも、全周回の半分程度しかできていなかったから、レース後半が勝負だとは思っていました。それだけに、この勝利は素直に嬉しい。今回は圧勝と言わせていただいてもいいでしょう」

一方、PPスタートのバレンティーノ・ロッシが10位に終わるという惨敗を喫したミシュランは、レース後の月曜に事後テストを行ない、徹底的に原因究明を行なった。第4戦中国GPには、そのデータをもとに改良を施したタイヤを持ち込んでいる。

金曜のセッションを終えたロッシの、そのパフォーマンスに対する評価は以下のようなものだった。

「今回のタイヤはカーカス(構造)を硬くしていて、よく作動している。ただ、ラスト5ラップ程度で安定しなくなるので、そこがちょっと心配。タイヤチョイスは2種類まで絞ってるけど、その選択次第で最後の5〜6周のパフォーマンスが決まってくるだろうから、そこの見極めが重要になると思う。ケーシーの走りを見る限り、BSとドゥカティはここでも安定しているようだね」

土曜の予選でロッシは、トップスピードこそドゥカティに劣るものの、圧倒的なタイム差を開いて前戦に続きPPを獲得し、再びストーナーとの熱戦を予感させた。

だが、日曜の決勝レースではBSが高い安定性を発揮して、ストーナーが連勝した。圧倒的な速さを見せながらも転倒リタイアが多かった昨年と比較して、今シーズンのストーナーはじつに安定した速さを披露するようになっている。その理由を、本人は以下のように自己分析する。

「今年はリミットで走らないようにしているんだ。去年はいっぱいいっぱいで走っていたから転倒が多かったけど、今年は限界までいかないようにしながら、自分の力のうちで走るようにしている」

その余裕が、タイヤの安定性に支えられていることはいうまでもない。なかでも、フロントタイヤの貢献度は大きいように思われる。というのも、コーナーの旋回速度が高いストーナーの場合、昨シーズンの転倒を見ていると、ブレーキングからクリップ(コーナー頂点)までのフロントに荷重がかかっていく段階で、フロントタイヤが切れ込んでしまうケースが多かった。

一方、BSは以前からフロントタイヤのエッジグリップに定評がある。ミシュランからBSに変わったとたんに転倒しなくなったという理由は、ライディングスタイルとタイヤ特性のマッチングというこの理屈と事象の符合からも説明がつくだろう。

BS勢がこれほど優れたパフォーマンスを示すようになった理由は、他にもある。排気量を800ccへ縮小させたことに伴い、ドゥカティの伝統的なデスモドロミック(強制開閉)バルブ機構や、スズキが昨年から取り組んできたニューマチックバルブなどが、エンジンパワーの向上や高回転域での安定性に寄与しているという側面も見逃せないだろう。

とはいえ、そういったマシン側からの要求に応えることができるタイヤを作り出したという意味でも、やはりこの2戦はBSの勝利、と言うべきだろう。

思い返せば、小排気量クラスに特化していたブリヂストンが、最高峰クラスへの挑戦を表明したのは2001年のことだった。この年を準備期間とし、翌02年には、カネモトホンダとプロトンKRにタイヤを供給して参戦を開始した。

「やる以上は最高峰に挑戦したいですからね。F1でもミシュランに勝ったからMotoGPでも勝てるだろう、なんて言う人もいるけど、そんなに簡単にいくわけがない。むしろ、四輪よりも不確定な要素が多い分だけ、二輪のほうがずっと困難だと思う。ここから先、順調に見えるときもあるかもしれないけど、頂点を目指していく最中にはオーバーハングだってあるかもしれないし、なだれに襲われるかもしれませんしね(笑)」

挑戦開始後数戦を経た英国ドニントンパークで、当時、山田氏は半分冗談めかしながら、そんなふうに志を語っていた。

あれから6年。その過程では、2004年に玉田誠がブラジルでBS初勝利を挙げ、2006年の開幕戦ヘレスでは、ロリス・カピロッシが本場欧州での勝利を挙げた。そして今年、開幕以来4戦3勝を達成し、その内容はいずれもミシュランを圧倒している。

いよいよ次戦から、本場欧州ラウンドが始まる。その最初の舞台は、ミシュランの本拠地、フランスGPだ。ルマンサーキットで、BSの実力がためされる。


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