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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi

第56号(2007年4月2日)【MotoGP】ロッシ、今季初勝利
〜久しぶりのパフォーマンス

MotoGP第2戦スペインGPで優勝を飾ったバレンティーノ・ロッシが、久しぶりにウィニングランでパフォーマンスを披露した。表彰台の頂点に立つのは06年マレーシアGP以来の6戦ぶりで、ガッツポーズでチェッカーを受けた直後から、クールダウンラップでは全身で喜びを爆発させた。

そのウィニングランの最中に、ボーリングのピンをかたどった着ぐるみ(中身はロッシファンクラブのメンバー)がコースサイドに登場。すかさずロッシは傍らにバイクを止め、ボールを投じる仕草を見せた。ここヘレスサーキットでの勝利数(97年,99年, 01年, 02年,03年,05年,07年)に見立てられたピンが次々と倒れ、ロッシはみごとに「ストライク」を投じたのだった。

スペインGPでの優勝後パフォーマンスの披露は、250cc時代の有名な「トイレ休憩」(ウィニングラップ中にマシンを停めてコースサイドの簡易トイレへ駆け込み、観客に「トイレに行きたかったから速く走ったのか」と思わせるジョークを演じた)以来だ。最近のロッシは、チャンピオン獲得時にこそ寸劇を演じることはあったものの、考えてみれば、王座のかかっていないレースでパフォーマンスを見せるのは久しぶりだ。

また、近年の彼の寸劇は、レギュレーション違反をとがめられた自らの過失を棚に上げて、告発した側を嘲笑するようなもの(05年マレーシアGP優勝時の"La Rapida(速いヤツ)"パフォーマンス)等、どうにも後味が悪く笑えないものが目立ったが、今回のような邪気のないものは、じつに久しぶりだ。

このような微笑ましいパフォーマンスが戻ってきたことには、それだけの理由がある。おそらく今シーズンは、ロッシ自身が心の底からレースを楽しんでいるからだ。

"La Rapida"をあてつけがましく披露していたころは、サーキットの内外に関係なく、彼がライバルに対して容赦なく心理的なゆさぶりを加えていた時代だ。スポーツマンシップという見地から、それらの行為はやや度を越しているといわれてもしかたないくらいに、悪意や棘を露わにしていた。また、当時その悪意や棘の攻撃対象となったセテ・ジベルナウやマックス・ビアッジは、精神的にあまりに脆く、ロッシの策略にまんまと引っかかって、自らを萎縮させ、あるいは疑心暗鬼にかかり、自滅していった。

しかし、今シーズン、ロッシと優勝を争っている選手には、そのような精神的な脆さがない。小排気量クラスで走っていたころから、いずれロッシにとって最大のライバルになると目されていた“神童”ダニ・ペドロサが、今季最高峰2年目を迎え、噂どおりに開幕戦から素晴らしい走りを見せている。

まだ21歳ながら「克己・謙遜・誠実」を己に課すペドロサは、その小柄な体躯に似合わない強靱な精神力を備えており、かつてのロッシのライバルたちがいとも簡単に翻弄されたような、そんな揺さぶりにはまるで動じる気配がない。

当のロッシ自身も、ペドロサが心理的場外乱闘で揺さぶられるほどヤワではないことを、きっと肌で感じているはずだ。だからこそ、今季は、コース内の戦いのみで正々堂々と雌雄を決しようとするフェアプレイが繰り広げられているのだろう。

ダニの「同期生」で、いきなり開幕初優勝を遂げたケーシー・ストーナーに対しても、これと同じことがいえる。スペイン選手権時代から切磋琢磨してきた同年齢のふたりはまったく逆の性格で、オーストラリア人のストーナーの場合は、強靱さというよりもむしろ、人を疑うことを知らない純朴な青年、といった趣もある。

昨年は、「タイヤの使い方がうまくない」とロッシに指摘され、ムキになって反駁するような微笑ましい一面も見受けられたが、遠回しに嫌味やあてこすりを言われたところで、ストーナーはまるで気にしないか、あるいはむしろ気づかないくらいの、そんなおおらかさを持っている。

ペドロサとストーナーは、ともに21歳。アルベルト・プーチに発掘されてスペイン選手権を走りながら経験を積み、ここまで成長してきた。一方、天真爛漫で無邪気なスーパースターを演じてきたロッシは、すでに28歳。第二戦を終えて、45ポイントのロッシを、36ポイントのストーナーとペドロサが追う。つくづく、時代は移り変わりつつあるのだなあ、という節目を感じさせる。


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