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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi
第55号(2007年2月28日)
【MotoGP】2007シーズンプレビュー〜天才vs神童

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 こんなに手に汗握るタイムアタック合戦を観たのはほんとうに久しぶりだ。一瞬も目が離せない緊迫感に満ちたラップタイムの削りあいは、シーズン中でもそうそうお目にかかれるものではない。
 開幕を目前に控えたスペイン・ヘレスサーキットで、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ/写真上)とダニ・ペドロサ(ホンダ/写真下)が繰り広げた40分間のバトルは、後々までの語りぐさになるほどの壮絶なものだった。

 MotoGPのスケジュールでは、毎年、開幕戦の直前に二回、IRTA(International Roadracing Teams Association)主催で全チームが参加する公式テストを行なうことが通例になっている。この数年はスペインのカタルーニャサーキットとヘレスサーキットがその舞台になっていたが、今年のIRTAテストはヘレスのみで実施された。
 このIRTAテストでは、3日目午後に40分のタイムアタックセッションが開催され、そこで最速タイムを記録した選手にはBMWが贈呈される。ここ数年は、ややマンネリ化の気配も見せていたこのイベントも、今年は冒頭に記したとおり、イタリアとスペインを代表する新旧天才対決で大いに盛り上がった。

 なにしろ、開始早々にペドロサがトップに立ったかと思うと、即座にそれをロッシが上回り、今度はペドロサがあっさりと昨年のベストラップ(1'39.064)を上回る1分38秒934に入れてしまったのだ。そこから先は、他のライダーが近寄ることのできない38秒台という領域でロッシとペドロサのふたりがどんどんタイムを削り取っていく。
 最後はロッシが0.133秒差で上回り、BMWを獲得したが、この結果が意味するものは、彼ら両者の勝敗というよりもむしろ、数字という客観的な指標にはっきりと現われた、図抜けた性能を持つふたりの人間とその他大勢、という冷酷で明解な図式だ。

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 28歳の陽気で明るいイタリア人と、21歳の沈着冷静なスペイン人。一見、対照的な印象のあるふたりだが、社交辞令的な表情の下には、驚くほど似ている共通点が姿をあらわす。勝利にこだわる強靱な執念と冷酷さだ。
 昨シーズン、ロッシが最も警戒していたのは最高峰クラスにステップアップしてきたかりのペドロサで、そのペドロサは優等生的な言葉とは裏腹に、最後まで虎視眈々とチャンピオンの座を狙っていた。奇しくも、ふたりともチャンピオンの座につくことは叶わなかったが、それだけに今シーズンの王座奪取に賭ける彼らの意気込みには並々ならぬものがある。

 今シーズンのMotoGPクラスは、“天才”と“神童”の勝負を軸に数々の名勝負が繰り広げられるであろうことは、もはや明白な事実といってもいい。

※                             ※


 250ccクラスに目を向けると、KTM2年目を迎える青山博一が確実にチャンピオン争いの一角を占めそうだ。昨年2勝を挙げランキング4位に終わった青山は「チーム自体がフル参戦初年度だった去年はまるっきり手探りの状態から始まったけど、今年は去年の積み上げがある。スタッフも、去年の結果が大きな自信になっているのでモチベーションは高い」と、王座獲得に意欲を見せている。

 そして、125ccクラスでは、今年からKTMワークスのエースとなった小山知良がチャンピオン最有力候補と目されている。クラス内で最もクレバーな走りをする選手で、開発能力も高く評価されている。「今年のバイクは、ワークスマシンだけあって、普通に速いですからね。テストでのアベレージも、自分が一番速かったんじゃないかな」とすでに自信を漲らせている。

 2007年シーズンは、125cc、250、MotoGPの3クラスとも、面白すぎておなかいっぱいになるレースが満喫できそうだ。

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