| 西村 章●取材・文 text by Akira Nishimura |
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| 第54号(2007年1月26日) | |
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【MotoGP】2007シーズン、新時代の幕開け〜タイヤ戦争 テスト禁止期間の明けた1月22日から三日間、マレーシアで今年最初のプレシーズンテストが行なわれ、新規参入するイルモアを除く全メーカーのライダーと800cc新マシンがセパンサーキットに終結した。 テスト三日目にはカルロス・チェカ(ホンダLCR)とケニー・ロバーツJr.(チーム・ロバーツ)がマシンを交換して走行するなど、ときにプレシーズンらしい長閑な光景も挟みながら、各陣営とも、今季から新たな排気量となったマシンの実戦準備に向けて精力的にメニューを消化していた。 今回のテストでひときわ目をひいたのは、昨年末のテストでも好調だったスズキ勢の驚くべき速さだった。昨年からニューマチックバルブを採用しているスズキは、800ccマシンでも相当に回転数を上げてきていることが排気音からも明らかで、このマシン開発の方向性に加え、もともとコーナリングの速いジョン・ホプキンスのライディングスタイルとあいまって驚異的なラップタイムにつながっているのだろう。ホプキンスは、三日目に2分01秒026というタイムに到達している。 このタイムを上回ったのが、王座奪回に燃えるバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)だ。テスト初日から高水準の安定したラップタイムを刻んでいたが、最終日には2分00秒936と、ただひとり0秒台に入れた。 ちなみにセパンサーキットの公式最速記録は05年にロリス・カピロッシが記録したポールタイム2分01秒731で、非公式には06年1月のプレシーズンテストでセテ・ジベルナウ(ドゥカティ)が2分01秒03というタイムを出している。これらの数字と比較すれば、今回のテストで、ロッシとホプキンスの速さがどれだけ図抜けていたかがわかろうというものだ。 排気量が昨年よりも190cc縮小されてトップスピードでは明らかに10〜15kmほど遅くなっているにもかかわらず、一周したときのラップタイムが速くなっている理由は、いうまでもなく、コーナリングスピードが向上しているからで、これはすなわち、エッジグリップや切り返しでの挙動など、マシンパッケージ全体に占めるタイヤの役割がさらに大きくなっている、ということも意味する。 ところで、2007年シーズンからは新たなタイヤレギュレーションが適用される。そのひとつに、2005年度を起点にドライコンディションのレースで2勝以上挙げたメーカーのタイヤ(=ミシュラン、ブリヂストン)を使用するチームのライダーは、全セッションを通じて使用できるリアのスリックタイヤを、レース前にあらかじめマーキングした17本に限定する、というものがある。 この規制された本数の中で決勝用タイヤの見極めがより重要になるのはもちろんだが、もうひとつ見逃せないのは、予選終盤のタイムアタックで使用するいわゆる予選用タイヤを履く回数やタイムアタックのタイミング、という戦略面での重要性がこれまで以上に増す、ということだ。 決勝レースのグリッド順位を決定するタイムアタックは、どのライダーも予選の最後に行なうのが一般的だが、ライダーによってはこのタイムアタックをさらに戦略的に利用する場合がある。たとえば去年などは、バレンティーノ・ロッシがフリープラクティスの早い段階から予選用タイヤを使用して一発タイムを出しに行く光景がたびたび見られたし、予選中でも、中野真矢がセッション中盤に一度アタックをして速いタイムを出しておく、という作戦を用いたこともあった。また、ライダーによっては予選用タイヤを4本使って時間の許す限りめいっぱい4回のアタックを行なう、ということも珍しくなかった。 レースウィークを通じて合計17本、という規制が適用されると、無尽蔵にタイヤを消費する上記のような作戦は事実上不可能になり、今まで以上に頭脳的な戦略が必要になる。 ミシュランは、この新しいタイヤ規制が発表されるとほぼ同時に歓迎の意向を表明しており、チーフディレクター(当時)のニコラ・グベール氏は「コストの抑制や他メーカーとの競争確保という意味でも、じつに意義深いルールの適用」だと述べている。また、ブリヂストンも、モーターサイクルレーシングマネージャー・山田宏氏が「長い目で見れば規制は必要だと思っていたので、そういう意味では望ましい方向。『金の勝負』にならないための一番有効な方法だと思う」と、同様に歓迎の意を表している。 MotoGPのチームにタイヤを供給するもうひとつのメーカーはダンロップだが、今回の規制に対して「ダンロップ救済措置」という皮肉な言い方をする声もあるとおり、現状ではミシュランとブリヂストンから、かなりの差をつけられてしまっている。07年シーズンにダンロップを採用するチームは唯一、Tech3ヤマハのみだが、今回のセパンテストで、同チームのエルベ・ポンシャラル監督はこのレギュレーションに触れてこんなことを言っていた。 「ライダー、マシン、タイヤなど、いろんな面でコンペティティブな要素が増えることは、レースを観る人たちにより面白さを提供することにもつながる。タイヤについていうなら、現状では『ミシュラン・BSカップ』みたいなものじゃないか。一足飛びに彼らと互角に戦うハイレベルなところに持っていくことは難しいかもしれないが、着実に我々のレベルは上昇している。困難な目標に立ち向かっていくというチャレンジングスピリットこそ、モータースポーツの醍醐味のはずだ。そう思わないか?」 『ミシュラン・BSカップ』という無理矢理な呼称にはさすがに苦笑せざるをえないが、その一方で、彼らのいう「チャレンジングスピリット」には、たしかに共感も覚える。 新たな排気量で際スタートを切る2007年のMotoGPは、新時代のタイヤ戦争の幕開けでもあるのだ。 |






