| 西村章●取材・文 text by Akira Nishimura 竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi |
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| 第50号(2006年9月21日) | |
【MotoGP】混迷するチャンピオン争い
このレースで優勝を争ったのは、ロリス・カピロッシとバレンティーノ・ロッシだった。黄色と赤の2台のマシンは、最終ラップの最終コーナーまで何度もトップを入れ替える激しい攻防を続け、最後はロッシが緊迫感に満ちた戦いを制している。ポイントリーダーのニッキー・ヘイデンは表彰台を外し、その結果、第13戦終了段階でのランキングはヘイデン214、ペドロサ192、ロッシ188、カピロッシ171、メランドリ168となった。 その翌週に舞台は熱帯から晩冬へ移り、第14戦オーストラリアGPは同国最南端のフィリップアイランドで開催された。 この決勝レースがじつに奇妙だった。降雨の際にライダーはピットインしてマシンを交換しレースを続行する、というレギュレーションが適用された初めてのケースになったのだ。 9月17日の午後、250ccクラスのレース終了時には晴れ渡っていた空がにわかに曇り始め、MotoGPクラスのスタート進行は予定よりも5分順延されることになった。この間にウェット宣言が出され、これでレース中に降雨があっても赤旗による中断をせず、ライダーはマシンを交換してレースを続行することが決定した。 決勝レースでは2番グリッドからスタートした中野真矢が飛び出し、一気に後続との差を開いた。レース開始直後にぱらつき始めていた雨は次第に強くなり、6周目から7周目になるとライダーたちは続々とピットインしはじめた。各ピット前ではチームスタッフがレインタイヤに履き替えたマシンを暖気しており、バイクを乗り換えて次々とピットを飛び出していく選手たちの慌ただしい姿は、まるで耐久レースのようですらあった。 その後の展開は、16周目でトップに立ったマルコ・メランドリが後続を引き離して今季3勝目。 「自分の前で扉が閉ざされたと思っていたけれども、これで再びドアが開いた」 との言葉にあるとおり、まさにこの勝利でチャンピオン争いに踏みとどまった恰好だ。 ロッシは最終ラップの最終コーナー立ち上がりを制して3位に食い込み、16ポイントを加算。一方、ペドロサは怪我と不得意の雨、タイヤ選択失敗という悪運三連発でかろうじて1ポイントを加算するのみの15位で終えている。ヘイデンは5位でカピロッシは7位。この結果、ランキングはヘイデン225、ロッシ204、メランドリ193、ペドロサ193、カピロッシ180、とますます緊迫の一途を極める結果になった。 さて、今回初適用となったマシン交換に関するライダーたちの反応だが、優勝を飾ったメランドリは 「僕はこのレースで勝ったんだから(文句をつけるわけがない)」と答え、「まるでプレイステーションで遊んでいるような奇妙な感じで、ピットに戻るときには他のチームのところに行ってしまいそうになった」と笑いではぐらかす程度のコメントにとどめた。 3位に入ったバレンティーノ・ロッシは「こういう状況に対応した完璧なルールを作るのはなかなか難しい。今回はルール初適用だったけれども、大きなトラブルや事故もなかった。もちろん、今後に向けて改善の余地はたくさんあるけれども、最初にしてはまずまずだと思う」と、ひとまず満足をしている様子だった。 ただ、他のライダーからは「マシン交換の際、ピットまわりに無駄に人が多すぎて危ない」「ピットアウトしてコースインしていくとき、危険な印象がある」という指摘もあがっている。とはいえ、ロッシが今回の措置を評価していることもあり、今後もこのレギュレーションが継続されてゆくと見ていいだろう。 ところで、ロッシと言えば、17周目にケーシー・ストーナーをオーバーテイクした際、追い越し禁止を意味する黄旗が提示されていたことは、テレビモニターにもしっかりと映り込んでいた。ロッシの背後を走っていたヘイデンもそれを目撃している、という指摘があった際に、ロッシは "Chi fa spia non e figlio di Maria!" (そんなスパイ行為をするやつはマリア様の子供じゃないね!) と、混ぜっ返してイタリア人から笑いを取っている。 そして、 「予選の際に、コースマーシャルはスロー走行しているライダーに注意を促す意味で黄旗を振っていた。黄旗は転倒などの危険な事象があった際に注意を促すためのもので、うしろから速いバイクが来るのを教えるために黄旗を振るのはおかしい、とレースディレクションに伝えたんだ。まあ、それはともかく、今回の雨のようなコンディションでは僕は旗を見る余裕もなかったし、本当に全然気づいていなかったことは誓ってもいい」 と弁明している。 ロッシのこの“黄旗追い越し行為”が、なんとなく不問に付されたままで終わってしまうのかどうかというのも気になるところだが、それよりも、このイタリア語の『毒舌』こそは、シーズンも佳境にさしかかり、チャンピオンシップを戦う相手に精神的な揺さぶりをかけるための巧妙な心理作戦のひとつ、と深読みのひとつもしたくなる。 いずれにせよ、いよいよロッシが6連覇に向けて厳しい追い込みをかけてきたことだけは、どうやら間違いなさそうだ。 |







