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西村章●取材・文 text by Akira Nishimura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi
第49号(2006年8月23日)
【MotoGP】スーパースターvsスーパールーキー──チェコGP
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 第12戦が開催されたブルノサーキットは、正式名称をマサリクサーキットという。通称からもわかるとおり、チェコ共和国第2の都市ブルノの郊外、市街地からは直線距離で10kmほど北西のこんもりとした森の中にある。ドイツや近隣東欧諸国からも多くの観客が詰めかけるが、今年は地元出身選手ルーカス・ペセックが125ccクラスで活躍していることもあって、例年よりも3万人ほど多い約16万人の観客を動員した。

 ペセックは大勢の地元ファンの前で表彰台を争うバトルを展開したものの、最終ラップの最終コーナーで転倒リタイア。さすがにその瞬間は、大きなため息がサーキットを覆った。250ccでは日本人選手の青山博一が今季4度目となる表彰台で3位を獲得。このレースから投入したフュエル・インジェクション(電子制御燃料噴射)システムの効果を引き出し、青山は開発能力の高さを改めて世界中に披露した。

 そして、MotoGPクラスのレースは、開幕直後から続く混戦にさらに拍車をかけるようなリザルトとなった。

 PPを獲得したのはバレンティーノ・ロッシ。予選タイムは昨年のポールタイムを1.5秒も縮める快走で、シーズン前半の悪運をすべて吹き飛ばす逆襲を予感させた。だが、決勝レースでは、ロリス・カピロッシが圧倒的な速さで優勝を収めた。レース前のカピロッシは、急激な成長を見せている若手ふたりに話題が及んだ際に
「あれだろ、僕はもう年寄りだっていいたいんだろ(笑)。確かに、これから先は走れてもあと2〜3年くらいだろうけど、まだ彼らには負けないよ。サマーブレイクで体調も復活したし、後半戦はブリヂストンとドゥカティに有利なサーキットが続くから、まあ、見ててよ」
 と、笑いながら話していたが、まさにそのとおりのレース内容で、周回ごとに0.5秒ずつ後続ライダーを引き離し続け、最後は余裕でチェッカーを受ける完勝レースとなった。

 だが、この勝利以上に、今回のレースでは二位争いが大きな注目を集めた。バレンティーノ・ロッシとダニ・ペドロサが、ついに真っ向勝負のバトルを展開したのだ。

「(前半戦にポイントを大きく取りこぼしたことで)チャンピオンシップのプレッシャーから解放されたから、これから先のレースでは楽しみながら勝利を目指すよ。できれば毎戦表彰台に上がりたいけどね」
 と、開き直りとも余裕ともとれる態度を見せていたロッシに対し、ペドロサは、
「開幕前も今も、目標はずっと変わっていません。いろんなことを学習して吸収しながら、一戦ごとに成長を続けていくこと」と語り、不動心を改めて印象づけたが、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに話が及んだときだけは、相好を崩して「そこはやはり目標だから、確実に取っておきたいですね」と笑みを浮かべた。

 これらの言葉から伺える性格の相違はもちろんのことながら、国籍、所属チームなどあらゆる面で対象的なふたりだけに、<スーパースター>と<スーパールーキー>の真っ正面からのぶつかりあいには、シーズン前から世界中の大きな期待が集まっていた。

 レース序盤でロッシの背後につけ、しばらく様子を見ていたペドロサは、終盤の勝負どころでオーバーテイクを狙ったものの、ロッシは一歩も引かず、マシンをねじ込む隙を与えなかった。コーナー立ち上がりでペドロサが前に出ると、ロッシはすかさず前を奪い返す。ロッシがペースをあげて引き離しにかかっても、ペドロサはぴたりと吸い付いたように離れない。緊迫する攻防が続いたが、ラスト3周ほどでペドロサが僅かなミスからコンマ数秒の差を許してしまい、最後はロッシ−ペドロサの順でゴールした。

 こうして、<スーパースター>vs<スーパールーキー>の直接対決第一章は、かろうじてロッシが勝利を収める恰好となった。

 ロッシの復調、ペドロサの急成長、そしてカピロッシの猛追で、シーズンはより混沌とした様相を呈してきた。前半戦終了時には、ロッシの自力チャンピオンが潰えたように見えたこともあったが、ポイントリーダーであるニッキー・ヘイデンの失速により、チャンピオン争いは、ますます予断を許さない状況になってきた。

 マレーシア→オーストラリア→日本、と続く次の3連戦がシーズン最大の山場となることは間違いないだろう。

 カピロッシは、昨年、マレーシアと日本で勝利を収めている。ペドロサは、昨シーズン(当時は250cc)、オーストラリアで優勝を飾り、日本では2位に入っている。マレーシアとオーストラリアは、ロッシにとって自他共に認める得意中の得意なサーキットだ。

 ここから先は、誰が勝つのか本当に予想がつかない。

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