| 西村章●取材・文 text by Akira Nishimura 竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi |
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| 第48号(2006年8月1日) | |
【MotoGP】盤石のホンダと、浮沈を繰り返すロッシ
ここまで形勢が二転三転するシーズンも珍しい。というよりも、バレンティーノ・ロッシがここまで浮沈を繰り返すシーズンも珍しい、というべきか。しかも、ライバルたちが揃って才能を花開かせてきたことが相乗効果となって、レースごとの攻防はより激しさを増している。2周連続開催となった第10戦ザクセンリンクと第11戦ラグナセカを終え、MotoGPは3週間のサマーブレイクに入ったが、この一週間で事態はさらに大きな転回を見せた。 第10戦ザクセンリンクで、ロッシはセットアップに苦しみ続け、予選順位は10番手に沈んでいた。ところが決勝レースではそこから怒濤の追い上げを開始し、あっという間にトップグループに肉薄。最後の最後は、マルコ・メランドリ、ニッキー・ヘイデン、ダニ・ペドロサというホンダの3台を0.145秒差で抑えきり今季4勝目を挙げた。ウィニングランでは、W杯の決勝戦で物議を醸した“友人”マテラッツィのシャツを着てイタリアの優勝を祝うパフォーマンスも見せた。圧巻の実力とケレン味たっぷりの演出は、まさに独壇場。そして、この勝利により、ロッシはポイントランキングでもトップを走るヘイデンに26点差まで迫った。残り7戦を残してこのギャップなら確実に射程圏内だ。そう思わせるに充分な勝ちっぷりだった。 しかし、第11戦ラグナセカで様相が大きく一変した。 カリフォルニア州モントレー郊外にあるこのコースは、ヘイデンのホームグランプリで、昨年も圧勝を飾っているだけに、レース前からニッキー有利の声も高かった。しかし、昨年に走行した経験とデータの蓄積、そしてザクセンでの勝ちっぷりから、ロッシが制するのではないかという予想も充分に成り立った。 フリープラクティスから予選を通じて、ヘイデンは意外な苦戦を見せた。思ったほど気持ちよく乗れない、と訴え、グリッドは6番手に沈んだ。ロッシもセットアップに苦労し、前戦ザクセンと同じ10番手からのスタートとなった。 だが、決勝レースでヘイデンは圧倒的な強さを見せた。序盤で2番手にあがると、約2秒差でトップを走行していたクリス・バーミューレン(スズキ)を徐々に追いつめ、17周目でトップに立つと、あっという間に引き離した。地の利や経験といった揶揄もねじ伏せるほどの圧倒的なレース運びで、今季2勝目。2位にはチームメイトのダニ・ペドロサが入った。経験豊富な選手ですら苦しむことの多いラグナセカをたった4時間の走行で完璧に攻略し、学習効果の高さと恐るべきポテンシャルをまたもや見せつけた恰好だ。3位にはマルコ・メランドリが入って、これでレプソルが1−2フィニッシュ、終わってみればホンダが表彰台を独占する圧勝レースだった。 一方、ロッシはというと、周回ごとに前を走る選手をオーバーテイクし4番手にまで浮上したものの、タイヤトラブルに見舞われてスローダウン、その後にエンジンブローを起こしてリタイアを余儀なくされた。 決勝日は、気温40℃、路面温度も60℃に達する過酷なコンディションだったこともあり、ヤマハ以外にカワサキ、スズキにもマシントラブルが発生している。裏を返せば、厳しいコンディションにも左右されないホンダの高い信頼性が充分に発揮されたともいえるが、ともあれ、ロッシがノーポイントを喫したのは、これで今シーズン3度目になる。しかも、いずれもマシントラブルという経験は、彼にとっておそらく初めてのことだろう。しかも、ランキングトップを走るヘイデンが優勝し、自らはノーポイントで終わったことにより、点差は51にまで開いてしまった。 第10戦のレース前、今シーズンここまでの推移について尋ねたとき、ロッシはこんなふうに答えていた。 「確かにここまでの流れはあまりいいとは言えないね。シーズン初頭はバイクにいろいろ問題があったし、次々と不運にも見舞われた。でも、今はバイクもそんなに悪くないから、残りのレースはいい感じで戦っていきたい。チャンピオン争いはとても激しいし、今年は速いライダーもたくさんいるから、いつも以上にとても大変なシーズンだけどね」 はっきりと口には出さなかったものの、笑顔で答える言葉の裏には確かにいつもと変わらない自信が見え隠れしていた。第10戦が終わった段階では、その自信が形を取り始めたようにも思えた。だが、たった一週間で事態はがらりと様相を変えた。 残りは6戦。全勝(25×6)したとしても、ヘイデンが全戦で2位に入り続ける(20×6)ならば、51点というポイント差は埋まらない。 バレンティーノ・ロッシの自力優勝は、なくなってしまったのだ。 |








