Special Contents MOTORSPORTS
西村章●取材・文 text by Akira Nishumura
竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi
第46号(2006年6月28日)
【MotoGP】ロッシの転倒〜中野真矢2位獲得──オランダGP
+拡大画像

 前回のコラムで「この強烈な引きの強さと強運こそが、本来のバレンティーノ・ロッシの姿でもある。破竹の快進撃が、ふたたびここから始まるのかもしれない」と書いたのは、つい先日のことだった。しかし、スペイン・バルセロナからオランダ・アッセンへ場所を移し、6月22日に幕を開けたダッチTTこと第8戦オランダGPで、事態はまたもや予想外の展開を見せた。誰も予想しえなかった悪夢がバレンティーノ・ロッシに降りかかったのだ。

 TT(Tourist Trophy)という名称からもわかるとおり、アッセンサーキットは公道レース時代の伝統と風合いを色濃く残す独特のコースとして知られている。全体的にフラットなわりに、マシンをまっすぐに立てることのできる場所はほとんどなく、つねにどちらかに傾いている。ブレーキングの目標物もない。一周の長さは約6kmとグランプリ全コースの中でも最長で、平均時速も最も高い……等々の理由からこのサーキットは「The Cathedral(グランプリ界の大聖堂)」と呼ばれてきた。

 しかし、昨シーズン終了後の大規模改修で「最もアッセンらしいパート」の前半セクションが大幅に削り取られ、全長は1.5kmほども短縮された4555mとなった。安全性が高くなったとはいうものの、それでもこの改修は多くのライダーに不評で「ヨーロッパのどこにでもあるようなコースになってしまった」「主催者はライダーが走るコースそのものよりも駐車場確保の方が重要だと思ってるんだろう」と、さんざんな言われようだった。

 とはいえ、そのようなコースであっても新たなレイアウトに順応しなければならないことに変わりはなく、木曜午前のフリープラクティスは、全クラスとも慣熟走行を兼ねて平素よりも長めの時間が割り当てられた。そして、そのセッションで、波乱が発生した。

 セッション開始後30分、最終セクションの左高速コーナーでロッシがハイサイドクラッシュを喫したのだ。診断結果は右手首豆状骨骨折と左くるぶし骨折。ハイサイドで転倒することも珍しければ、負傷を負うことはさらに珍しい。以後のセッションも、ロッシは体の状態を確認する程度の走行にとどめ、痛み止めとテーピングを施し、グリッド最後尾の18番手から決勝レースに臨むことになった(ちなみに、今回転倒を喫した最終セクションはコース改修とは無関係な部分)。

 決勝レースで、ロッシはレース中盤から徐々に追い上げを開始し、一時はトップグループと遜色ないほどのラップタイムをマークしながら一台、また一台とパスしていった。最後の数ラップは「痛み止めが効かなくなりマシン操作がとても辛かった」と振り返ったものの、それでも8位でチェッカーを受け、安堵の笑みを浮かべた。貴重な8ポイントを獲得して年間ランキングでも3位にはつけているが、これから先のシーズンを考えると、負傷を抱えたロッシが厳しい戦いを強いられることは間違いない。

 一方、優勝を飾ったのはニッキー・ヘイデン。ラスト2周は、それまでトップを走行していたコーリン・エドワーズと何度も順位を入れ替えた。ともにアメリカンスーパーバイク出身者ならではの、素手で殴り合うようなバトルだったが、最終ラップの最終セクション、シケインの進入でラインを奪い合う攻防の結果、ブレーキングで突っ込みすぎたエドワーズが切り返しに失敗して転倒、ヘイデンが逆転優勝となった。

 今シーズンは第5戦を除き、ヘイデンは全レースで表彰台を獲得してきたものの、優勝だけは届かないレースが続いていた。勝利がないままランキングトップを守ってきた彼が、今回の優勝で一気に勢いをつけ、シーズンを引っ張っていく存在になるのか。それともさらにここからまだひと波乱やふた波乱が待ち受けているのだろうか。

※               ※

 今回のレースでは、カワサキの中野真矢が2位で表彰台を獲得した。アッセンの改修はカワサキには吉と出たようで、最初の走行を終えたあとのコースに対する印象は「自分としては、好きな方に変わったかんじですね」というものだった。
「改修後の、ヘアピン状に左へ回り込むコーナーはすごく小さくて、しかも1コーナーも狭くなっているからパッシングポイントが少なそう。それだけに予選順位が鍵を握りそうですね」

 その言葉どおり、予選ではタイムシートの上位につけ、2番グリッドからのスタートとなった。決勝レースではヘイデンとエドワーズから少し離れてしまったが、それでも単独3番手をキープ。最終ラップでのエドワーズの転倒により、表彰台の順位をひとつあげてチェッカーをうけた。

「3位でも上出来と思っていたのに、コーリンの転倒のおかげとはいえ2位に入れて本当に嬉しい。決勝レースでは気温が上がるだろうと思って硬めのフロントタイヤを履いたことがぴったりはまり、想定していた1分38秒台よりも速い37秒台で周回することができました。今年はエンジンも車体も一新したから、この表彰台は自分たちにとっての第一歩。また、トップと5秒ほどの開きがあるので、次はそれを詰めるようにしていかないと」

 カワサキでは04年のもてぎ以来2回目、しかも自己ベストとなる2位表彰台を、中野は冷静に振り返った。第8戦は、中野真矢のライダーとしての技倆がMotoGPでトップクラスにあることを、改めて世界にアピールできた大会だった。

sportiva present 詳細はコチラ≫
sportiva 本誌アンケート こちらから応募できます
S-men's.net(sportiva)webメンバー募集中! 会員特典多数!!
mobile sportiva モバイルサイトも更新中!URLをメールで送信>>>
contact us 読者係:03-3230-7755 編集部:03-3230-6058
年間定期購読 お申し込みオンラインサービス

Sportiva 本誌
定価580円 毎月25日発売
今月の特集

黄金世代
世界を驚かせた18人の今

  • 黄金世代は何をもたらしたのか?
  • 小野伸二
    「もう一度、アフリカのピッチで…」
  • 柳沢敦が語る“シンジと黄金世代”
    「伸二からのパスは
    スバ抜けて優しかった」
  • ワールドユース99選手名鑑
  • 高原直泰
    「不敗神話を持つエースの10年」
  • 小笠原満男
    「もう第3の男とは呼ばせない」
  • 遠藤保仁
    「オレらの世代が
    やらないといかんやろ」
  • 稲本潤一&中田浩二
    「オレが欧州で戦ってきた理由」
  • 黄金世代 最強伝説
    「伝説は94年に始まっていた」
  • ドキュメント・ワールドユース99
  • オレとワールドユース99
    播戸竜二、酒井友之、
    永井雄一郎、南雄太、
    加地亮、本山雅志
  • ワールドユース99
    アフリカ事件簿
  • あの黄金世代たちは今……
    榎本達也、石川竜也、
    高田保則、氏家英行
  • フィリップ・トルシエ
    「彼らは抜群の世代だった。
    “黄金”かどうかは別にして……」
  • 検証・世界の黄金世代
    「日本を破ったスペイン
    “黄金世代”は
    なぜ消えたのか!?」
  • 岡田ジャパンは本当に
    南アに行けるのか!?
  • 江夏豊の夢野球紀行
    「四国・九州アイランドリーグ編」
  • ストイコビッチを
    日本代表監督に!
    1.欧州ジャーナリストほかが語る
    「ピクシーの変身」
    2.識者が解剖
    「ピクシーの手腕」
    3.藤田俊哉
    「代表監督にはカリスマ性が必要だ」
    4.グランパス主力選手アンケート
  • クリスティアーノ・ロナウド大研究
  • 西川周作
    「北京でまた
    ひと回り大きくなりたい」
  • スラムダンク奨学金2期生
    谷口大智&早川ジミー
本誌冒頭記事紹介