| 西村章●取材・文 text by Akira Nishimura | |
| 第45号(2006年6月26日) | |
|
【MotoGP】3週連続レースのスタート──カタルーニャGP 06シーズンのMotoGPもいよいよ前半戦最大の山場にさしかかった。第7戦カタルーニャGP(スペイン・バルセロナ)〜第8戦ダッチTT(オランダ・アッセン)〜第9戦イギリスGP(ドニントンパーク)は、それぞれ6月18日、24日、7月2日に決勝を迎える過酷な3週連続開催スケジュールで、ここで大きくつまずくと、残りのシーズンに大きな影響を及ぼしかねない。ところが、その緒戦となるカタルーニャサーキットで波乱が発生した。 レーススタート直後の1コーナーでセテ・ジベルナウ(ドゥカティ)とロリス・カピロッシ(同)のマシンが接触、その衝撃がブレーキレバーにヒットしてジベルナウのマシンはジャックナイフ状に前転する恰好で転倒した。これに巻き込まれて転倒したカピロッシがマルコ・メランドリ(ホンダ)をマシンごと押し倒し、地面に転がったメランドリは、自分のマシンに押し流されながらアウト側にいたダニ・ペドロサ(ホンダ)を外へ押し出した。なんとか倒れまいとマシンを制御するペドロサはジョン・ホプキンス(スズキ)に追突、ペドロサはグラベル上でコントロールを失って転倒、ホプキンスもコース脇の緩衝材に衝突した。また、ジベルナウのマシンに行く手を塞がれたランディ・ド・ピュニエ(カワサキ)もコースアウトして転倒を喫した。 この多重クラッシュによりレースは赤旗中断、ジベルナウ、カピロッシ、メランドリの3人が病院に搬送される一方、30分後の仕切り直しとなったが、そのウォームアップラップを終えたところで今度はクリス・バーミューレン(スズキ)のマシンがエンジンストール。再度ウォームアップラップのやり直しとなった。その間にマシンがオーバーヒートした中野真矢(カワサキ)はスペアマシンに乗り換え。レギュレーション上は、ピットスタートとなるはずだが、この混乱劇のなかで何の指示もないままコースに誘導される恰好となった中野は、レース再開後にペナルティの指示が出され、それを確認できないまま3周が経過して失格処分となってしまった。 レースは再開後も転倒者が続出する大荒れの展開となったが、9周目で先頭に立ったロッシがその後もトップをキープ、波瀾に満ちたなかでも図抜けた集中力の高さを見せつけながら王道パターンの展開で今季3勝目を飾った。 ちなみに病院へ運ばれた3名のうち、ジベルナウは鎖骨骨折でプレート挿入の手術を行い、次戦の欠場は決定的と見られている。メランドリは頸椎捻挫と鎖骨脱臼、カピロッシは腹部打撲と内出血、と診断され、それぞれ経過を観察中と報告されている。カピロッシとメランドリは、年間ランキングで優位に立っていただけに、たとえ第8戦と第9戦に参戦できたとしても優勝争いは難しく、ポイント争いで大きく遅れをとってしまうことは明白になった。その意味では、彼らふたりにとってチャンピオンシップの面でも致命的な負傷となってしまったことは間違いないだろう。 一方、ロッシは優勝によりランキングは3位に浮上、トップのニッキー・ヘイデンとのポイント差も29にまで詰めた。1コーナーのアクシデントにも巻き込まれず自分は無傷で、行く手を塞いでいたライバル2名が脱落していったことを考えると、実にラッキーな展開、ともいえる。シーズン序盤に続いた悪運が嘘のようだ。しかし、この強烈な引きの強さと強運こそが、本来のバレンティーノ・ロッシの姿でもある。破竹の快進撃が、ふたたびここから始まるのかもしれない。 ※ ※ ところで、今回のレースでは、KR211Vを操るケニー・ロバーツJr.が3位表彰台を獲得した。ロバーツ親子とKR211Vの戦いについては開幕前にも当コラムで紹介したが(2006年2月22日掲載分参照)、ついに今回、初表彰台を獲得。ケニーはフリープラクティスから好調で、予選では他のホンダ勢を抑えて3番グリッドについた。それも驚異的だったが、打倒ワークスを旗印に掲げて戦ってきた彼らにとって、今回の表彰台の嬉しさは想像に余りある。 シーズン前半戦から、ロバーツシニアは何かにつけて、「テストライダーさえいれば開発はさらに進むし、速いマシンに仕上げることができる」と言ってきた。彼一流の冗談交じりのグチにも思えたが、しかし、実際にマシンは少しずつとはいえ着実に安定した速さを見せるようになっていた。そしてついに、今回3位表彰台を獲得するに至った。6月18日は父の日。ロバーツシニアにとって、最高のサプライズプレゼントだったことはいうまでもないだろう。 |






