| 西村章●取材・文 text by Akira Nishimura 竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi |
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| 第41号(2006年5月9日) | |
ホンダ復活と若手の台頭──トルコGP
レースを引っ張ったトップグループは、終始熾烈なバトルを繰り広げた。ホンダ新時代を担う20歳のダニ・ペドロサとケーシー・ストーナー、そして昨年も優勝争いを演じたマルコ・メランドリとニッキー・ヘイデン。4台はコーナーごとに何度も順位を入れ替えながら、勝負は最終ラップまでもつれ込んだ。 前戦カタールでも闇雲な速さを披露して非凡な才能の一端を見せたケーシーは、中盤以降トップをキープしたものの、最後は2位でチェッカーを受けた。クールダウンラップではやや首を傾げて悔しさも滲ませたが、そうはいっても最高峰クラス二戦目のPP獲得に続き三戦目で二位表彰台は上々の出来。冷静に振り返ってみるとまずは納得、といった表情で、まるで250ccクラスのような激しいレースだったね、という問いには 「というか、むしろ125ccみたい(笑)。最後にマルコが来るのはわかってたんだけど、あのセクションは金曜と土曜に転倒した場所だったから、あれ以上リスクを冒せなかった。(タイヤの使い方がまだまだ拙いという)僕に対する批判にも、結果で答えることができたと思うよ」 と、満足そうな笑みを見せた。 そのケーシーに、マルコが最終ラップ最終セクションのシケインで仕掛け、深いブレーキングで勝負を制した。シーズン前からこの乗り方が出来ず、スランプに陥りかけ悩んでいただけに、自分の持ち味を復活させて獲得した勝利には喜びを爆発させた。 「今日のケーシーはすごく速かったから、あそこしか勝負できる場所がなかった。『たとえバイクのフィーリングがよくないときでも、チャンピオンシップを見据えてシーズンを戦っていかなければならない』と、去年、ケビン・シュワンツにアドバイスされたんだけど、そのとおりにやってきた甲斐があったよ!!」 この優勝で、マルコはランキングトップのニッキーと7ポイント差の三位に浮上した。 そのニッキーは、ラスト4ラップでやや前から離れてしまったものの、今回の三位表彰台で7戦連続表彰台を達成。この水準の高いアベレージは、2003年以来ずっと我慢強く育成を続けてきたホンダの努力に加え、エースライダーとしての自覚のあらわれでもあるだろう。 一方、ラストラップの1コーナーでフロントが切れ込み転倒を喫したダニは、手にしたも同然の表彰台を逃してしまった格好だが、16番グリッドからトップグループに追いつき最後まで優勝を争ったことで、やはり近年稀な逸材、という印象を大きくアピールした。今回の転倒は沈着冷静な彼の性格に似つかわしくないミスだが、バトル相手は同年齢で同じホンダに乗るケーシーなのだから、つい熱くなってしまったのも無理からぬことだ。 ディフェンディングチャンピオンのロッシは、今回4位でチェッカーを受けている。フリープラクティスからマシンセッティングに苦しみ続け、決勝では11番手スタート。2周目には14番手まで順位を落としたところから最後はここまで追い上げて来るのだから、常軌を逸したそのマシンコントロール能力は健在だ。今シーズンは、成長著しいヤングライダーたちと、無邪気でいることをすでに許されないチャンピオンが真っ向からぶつかる激しい戦いを何度も見ることが出来るにちがいない。 やはり、時代は大きく動き始めている。 ※ ※ 新しい時代の息吹を象徴する出来事は、250ccクラスにもあった。 ホンダスカラシップ一期生として過ごした二年間を経て今季からKTMへ移籍し、今回のレースで勝利を飾った青山博一だ。 ワークスチームとはいっても、KTMは昨年夏から250ccクラスへ参戦を開始したばかりで、ホンダやアプリリアと比べると、データの蓄積や経験など、あらゆる面で後塵を拝している。しかも、開発初期段階のエンジン型式は現在主流のVツインではなく、非力なパラレルツイン。誤解を承知で野球にたとえれば、楽天イーグルスのようなチーム体制、といってもいいだろう。 青山は、開幕前のテストではチームの現状を以下のように語っていた。 「出来たばかりの新しいバイクなので、現状はそんなに簡単ではないと思います。さすがワークスチームだけあって、人も多くて仕事も早いけど、シーズン序盤の4〜5レースは厳しいでしょうね。前半戦でマシンを作っていきながら、後半戦の優勝を目指します」 そのためには、もっと走り込んでマイレージを稼ぎ、データを集めることが必要なのだ、とも話した。 「とにかく今はもっと走ること。でも、マシンのことばかり言ってると自分が駄目になっていくので、走りながらぼく自身のレベルもあげていかなきゃいけないんですけど」 開幕してみると、初戦で6位、第2戦では5位、と予想を上回る好調な滑り出し。それでも青山は、自分たちに厳しく向き合う姿勢を緩めなかった。今回のレースでも、「走る以上は優勝を狙うけれども、表彰台に上がれればいいかな……」という状態だったと語る。 決勝レースで終始トップグループに食い込み、最終ラップの最終セクションで抜け出しトップでチェッカーをうけた勝ちっぷりは、この二年間に蓄積した経験の賜物だろう。また、この短期間でマシンを優勝に導いた事実も、青山の高い開発能力を示している。 「途中はついていくだけで精一杯だったんですけどね。KTMの初優勝をぼくが挙げることができたことが嬉しい。でも、マシンをもっとよくしなきゃいけないから、今回の結果に満足せずもっと開発を進めていきたいです」 グランプリライダーとしてひとりだちした青山博一は、資質の高い選手としてその才能を開花させはじめた。それを最も喜んでいるのは、ひょっとしたら、スカラシップ時代の青山と二年間を共にしたホンダのスタッフたちなのかもしれない。 |






