| 西村章●取材・文 text by Akira Nishimura 竹内秀信●撮影 photo by Hidenobu Takeuchi |
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| 第39号(2006年3月30日) | |
【MotoGP】新星ペドロサ、2位デビュー──スペインGP
ペドロサの非凡な才能と可能性については以前にも当欄(2006年2月1日)で触れているが、それにしても、まさかこんなにあっさりと世界最高峰のマシンに順応し、レースに対応できてしまうとは、正直なところ思ってもいなかった。おそらく、世界中でもこの結果を予想していたのは、地元のスペイン人ジャーナリストくらいのものだろう。 フリープラクティスが始まった金曜日、スペインのある二輪専門誌記者は「決勝日が待ち遠しいよ」と語った。「ダニがどんなレースをするのか、今からわくわくしてるんだ」と話す彼は、明らかにペドロサが表彰台争いをすると期待している様子だった。半ば社交辞令のように彼に話をあわせていると、やがて笑みを浮かべながらこんなことを言った。「それにな、決勝日は26日なんだぜ(26はペドロサのゼッケンナンバーでもある)」「なるほど。そりゃ確かに面白い偶然だね」 そういってその場の話は収束したが、その1時間後に始まった午後のフリープラクティスでは、早速、驚くべきシーンを目の当たりにすることになった。 前を走行しているマシンをパスする機会をうかがっていたペドロサは、ほぼ180°回り込む低速の最終コーナー進入で先行車よりも1本イン側のラインを取った。クリップにつくと一気にマシンを起こして加速し、コーナー立ち上がりであっさりと前を走るマシンを抜き去る。無駄のない一連の挙動は、「これはきっとレースでもいい勝負をするな」と思わせるに充分なほど美しかった。土曜日午後の予選では、トップのカピロッシから0.670秒落ちの5番手タイム。フロントローを独占したカピロッシ、ジベルナウ(ドゥカティ)、中野真矢(カワサキ)のブリヂストン勢3台、ホンダワークスのエース、ニッキー・ヘイデンに続くグリッドポジションを獲得した。 そして26日の日曜午後2時に始まった決勝レースで、冒頭のような展開になった。バックストレートを過ぎた左高速コーナーで、リアをずるずる滑らせながら立ち上がってくるカピロッシの背後から、素早くマシンを引き起こしてペドロサが綺麗に加速体制に入り、2台はテールトゥノーズの格好で、観客席がすり鉢状にコースを取り囲む最終セクションに飛び込んでくる。そんなシーンを目のあたりにしたスペインの観客が昂奮しないわけがない。怒号とも歓声ともつかないような、パニック寸前の狂騒状態である。 さすがにラスト6ラップではタイヤと体力の消耗でペドロサは順位キープに切り替え、最後は2位でチェッカーを受け、デビュー戦ながら20ポイントを獲得した。優勝したカピロッシは、ペドロサに追いつかれたときの状況をレース後に振り返り「MotoGPの初レースなのに、上手にマシンを操るヤツだな」と思って感心したという。ブリヂストンタイヤ・MCレーシングマネージャー、山田宏氏も、レース後、ほっと胸をなでおろしたあと、ひとこと「速い……」とつぶやいた。 「今回のレースは勝てる自信があったし、ロリスも最後にプッシュするため力を温存していると思ってたけど、それでもあんなふうに迫ってこられるとさすがに焦りますよ。これが最初のレースなんて、末恐ろしいね」 と、ライバル陣営ながらその能力を素直に賞賛した。 当のペドロサはというと、2位という結果に納得した表情で、レースをこう振り返った。 「序盤に多くの選手をパスしてロリスに追いついたらもう体力を使い切ってしまっていて、フロントも切れ込みはじめたので、2位でゴールすることにしました。今回は優勝できるとは最初から思ってませんでしたし、自分はまだまだ順応段階なので、シーズン中頃か終盤戦には90〜95%の力が発揮できるようになっていたいと思います」 ところで、誰もが今回のレースで優勝することを疑わなかった王者バレンティーノ・ロッシは、一周目の1コーナーで追突されて転倒、レースに復帰したものの14位で2ポイントを稼ぐにとどまっている。シーズンが進み、やがてペドロサが95%の力でレースを戦えるようになった頃、開幕戦でふたりの間に開いたこの18ポイントの差が終盤戦の展開に大きく影響するような事態になっていると面白いのだが。 |







