池之平昌信●撮影 photo by Masanobu Ikenohira
第62号(2007年11月26日)【F3】F1登竜門のマカオGP〜日本勢が表彰台を独占
11月15日〜18日、急速に開発が進む中国大陸東南部のマカオに世界各国から“未来のF1ドライバー”たちが集結。F3世界一決定戦のマカオGPが開催された。
F1のモナコGPと同様に公道コースを舞台にしたマカオGPは世界中のレースファンや関係者から大きな注目を集めている。実際、今年もサーキットには日本のメーカー関係者だけでなく、ミハエル・シューマッハの辣腕マネージャーとして知られるウィリー・ウェバーやBMWモータースポーツのディレクター、マリオ・タイセンらが、レースに熱い視線を送っていた。
それはなぜか? このイベントでは過去にアイルトン・セナやミハエル&ラルフのシューマッハ兄弟、そして日本の佐藤琢磨らが優勝を飾ってスターダムにのし上がり、その後、F1にステップアップしているからだ。近年もセバスチャン・ベッテルやロバート・クビサがマカオで素晴らしい走りを見せ、F1参戦の足がかりをつかんでいる。マカオGPはF1の登竜門レースなのである。
今年で54回目を迎えたマカオGPは、日本勢の独壇場だった。日本チームとして唯一の出場となったトムスのオリバー・ジャービスが予選、予選レース(決勝の第一ヒート)、決勝のすべてでトップを守り、完全優勝。2位には塚越広大(全日本F3ランキング5位)、3位にはトムスの全日本F3チャンピオン、大嶋和也が入り、表彰台は日本勢が独占することになったのだ。
さらに今季のイギリスF3チャンピオンで全日本F3にも出場していたマルコ・アスマーが4位、全日本F3ランキング2位のロベルト・ストレイトが5位となり、日本勢が1位から5位までを占めたことになる。
中でも塚越はもっとも素晴らしいパフォーマンスを発揮した。彼は今シーズン、日本ではホンダのワークスチームに所属していたが、マカオGPではイギリスのマノーモータースポーツから出場。
ダラーラ・メルセデスという初めてのパッケージにもかかわらず、予選では3番手を獲得。土曜日の予選レースではアクシデントに巻き込まれて9番手に終わるが、翌日の決勝ではマカオ名物のリスボア・コーナーで何度もオーバーテイクを決め、観客を大いに沸かせた。
首位のジャービスに迫ったところで、15周のレースはチェッカーフラッグとなってしまったが、その実力を強烈に印象づけた。
「優勝できなかったことは残念ですが、最高のレースができました。それにヨーロッパの人たちにいいアピールができたと思うので、すごく満足しています」
と塚越はレース後に満面の笑みを浮かべながら語っていた。
彼のコメントからもうかがい知れるように、塚越は来季ヨーロッパでのレース参戦を狙っている。ホンダのサポートを受ける彼は“先輩”の佐藤琢磨のようにヨーロッパで実績を残し、数年以内にはF1へのステップアップを思い描いているのだろう。
一方、マカオGPで塚越に抜かれて3位に終わった大嶋。全日本F3でのタイトル獲得後は「来年はヨーロッパで戦いたい」と公言していたが、日本でのステディな走りが評価され、すでに来年からのユーロF3参戦が決まった。
所属チームは塚越がマカオで所属していたマノーモータースポーツ。このチームには、大嶋のTDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)の先輩、中嶋一貴がかつて所属していた。ご存知のように中嶋は来季からF1参戦が決定しているが、彼は全日本F3→ユーロF3→GP2というステップを踏んできた。大嶋もまた先輩が通った道を歩むことが決まった。あとは結果次第で、自ずとF1への道は切り開けてくるだろう。
マカオGPの期間中には、小林可夢偉が来季からトヨタF1のサードドライバーに就任することが発表された。今季ユーロF3に参戦していた小林(ランキング4位)は昨年のマカオGPで優勝争いを演じていただけに大きな注目を集めていたが、予選レースでのエンジントラブルが影響し、不本意な13位に終わった。それでも決勝では最後尾からの怒涛の追い上げを見せ、そのポテンシャルを存分に披露してくれた。
今年のマカオGPは日本のレースレベルの高さをあらためて示すと同時に、日本人の若手ドライバーの層が確実に厚くなっていることを証明したと思う。
また新時代の日本人ドライバーたちは皆、自然体でコンプレックスがあまりないように見える。かつて日本人ドライバーは海外では力を出し切れない、路面の荒れた公道レースで勝てない、などと言われたが、それもすっかり過去の話だ。
ガードレールに囲まれた難しいギヤ・サーキットで日本の若手ドライバーたちは伸び伸びと、そして力強く周回を重ねていた。
「これからの数年間で日本人ドライバーが世界の舞台で何人も活躍するだろう」
決して大げさではなく、今年のマカオGPはそんな明るい未来を予感させてくれた。






