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川喜田研●取材・文 text by Ken Kawakita
桜井淳雄●撮影 photo by Atsuo Sakurai(BOOZY.CO)

第56号(2007年4月20日)【F1】上位混戦の2007シーズン〜新鋭ハミルトン

ミハエル・シューマッハというカリスマを失ったF1は本当に大丈夫なの? 1カ月前まで、「皇帝のいない季節」にそんな不安を抱いていた人も多かったのだが、オーストラリア、マレーシア、そして先週のバーレーンと遠征レースが続いた開幕3戦を見て、僕は素直に「面白いじゃん!」と思った。

たしかに「横綱不在」という雰囲気は否定できないけれど、フェラーリに移籍したキミ・ライコネンとマクラーレンに移籍したフェルナンド・アロンソというふたりの「大関」が拮抗した力を見せてくれたし、そこに両チームのナンバー2ドライバー、フェリッペ・マッサとルイス・ハミルトンが絡んで、シーズン序盤から緊張感のある戦いを演じている。

とくに、58年にわたる近代F1史上初めて、デビューから3戦連続で表彰台に上がったマクラーレンの新生、ルイス・ハミルトンの活躍は、彼が中米、グレナダ出身の父親を持つ黒人系ドライバーということもあって「F1界のタイガー・ウッズ登場」ということで大きな注目を集めている。

マクラーレンのロン・デニス代表がその才能にほれ込み、彼がまだ12歳のときに契約。以来、手塩にかけて育ててきた文字通りの「秘蔵っ子」であるハミルトンについては、昨年のGP2シリーズでチャンピオンになる前から「凄い子がいる」という評判を耳にしていたのだが、僕も正直、F1でいきなりココまでやれるとは思っていなかった。

開幕戦のメルボルンではスタートでアロンソをぶち抜き、レース終盤までチャンピオンを後ろに従える堂々とした戦いぶり。続くマレーシアではフェラーリの2台をガッチリと押さえ込み、エース、アロンソの優勝をアシスト。第3戦のバーレーンでも予選2位と初のフロントロウを獲得し、レースでもキッチリと2位でフィニッシュ……と、予選、決勝を通じてエースのアロンソを上回る結果を残す活躍!

スピード、レース運び、集中力、判断力といったレーシングドライバーとしての「資質」はもちろんだが、マクラーレンが久々にタイトルコンテンダーとしての戦闘力を取り戻したこのタイミングで、ハミルトンがF1デビューを飾ったという、この絶妙なタイミングに、彼のもつ「運命の強さ」のようなモノを感じずにはいられない。

GP2時代、彼にインタビューしたときの印象は ともかく雑念の無い、目標に向けてしっかりとフォーカスされた青年だということ。人当たりも柔らかく、表情にもまだ少年のあどけなさが残るのだが、その目はキッチリと自分の足元や進むべき未来へと向けられている。

周囲の過剰な期待や「黒人ドライバー」という好奇の目にもまるで揺さぶられることのない「強い心」がハミルトンの最大の武器。そんな彼が、ポストシューマッハ時代の幕開けに、しかも最高のタイミングで復活を遂げたマクラーレンのステアリングを握るのだ。

まだ、初優勝すら挙げていないというのに、マスコミが早くも「史上初のルーキーチャンピオン誕生か?」と期待を膨らませてしまうのも分かる気がする。

約1カ月のブランクをはさんで、次戦バルセロナから春のヨーロッパラウンドに突入するF1GP。スペインGPではほとんどのチームが大幅なマシンの改良を予定しており、新たな変化がもたらされる可能性もあるが、少なくとも現時点ではフェラーリ、マクラーレンという「2強」の戦力がいい具合に拮抗し、それぞれのチーム内でもナンバー1ドライバーとナンバー2ドライバーの差は絶対的ではないように見える。

シューマッハ不在のF1で「横綱昇進」を目指すアロンソとライコネン、そして次の時代を狙うハミルトンとマッサの4人がどんな戦いを見せてくれるのか? まずは王者アロンソの地元、スペインGPに注目だ。


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