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川喜田研●取材・文 text by Ken Kawakita
桜井淳雄●撮影 photo by Atsuo Sakurai(BOOZY.CO)
第51号(2006年9月13日)
【F1】皇帝・ミハエル・シューマッハ、引退──イタリアGP

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 ついに“その日”がやってきた。モンツァのコース上を埋め尽くした“赤い海”のような人波と、その大歓声に応えるウィナーのシューマッハ。漂う発炎筒の煙、サーキット全体がひとつの塊になって揺れているような感覚……。そして、レース後の記者会見に臨んだミハエル・シューマッハの口から“引退”という言葉が静かに流れ出る。

 このイタリアGPですべてが明らかになることは、以前からわかっていたし、その答えが引退である可能性はさまざまな形ですでに報じられていたのだが、それがこうして現実になってみると、改めてそのインパクトの大きさに気づかされる。

 多くの人たちが「皇帝のいないF1」の姿を想像できずに戸惑い、会見に臨んだシューマッハ自身もまだ「F1の無い生活」について、多くを語る心の準備はできていないようだった。それほどまでにF1にとってシューマッハの存在は大きく、また、彼にとって「F1はすべて」だった。

 過去15年間のF1を支えたこの「基本構造」が今シーズン残りたった3戦で終わりを迎えることになる……。誰もがその事実をまだ、実感できずにいるはずだ。

「引退を決めたのは7月のインディアナポリスの後、チームがライコネンと契約し、僕が将来の方針を決めなければ、チームメイトのマッサの将来にも影響するという状況で、これ以上、決断を引き伸ばすべきではないと思ったんだ。以前からF1を去るときは自分が衰える前にしたいと思っていた。これまで支えてくれた妻のコリーナや家族、両親、そしてベネトン時代を含めたチームの仲間たちのことを考えれば、引退を決意するのは簡単ではなかったが、今、ここで決断するのが自分にとってベストだと思ったんだ」とシューマッハ。

 涙を見せず、凛とした態度で質問に答え続けた彼だが、「F1を去ることで、何が一番さびしいですか?」というジャーナリストの質問に数秒間、思いつめた表情で沈黙し、呟くように小さな声でひと事「ごめん……」と答えに詰まるシーンが印象的だった。

「これ以上、引退に関して詳しい話をする準備は僕自身までできていないんだ。それに、今はまだ残り3戦にベストを尽くすことに全ての力を注ぎたい」と最後王座獲得に向けて意識を集中させるシューマッハ。

 今回のイタリアGPでシューマッハが優勝し、アロンソがリタイアとなったため、ふたりのポイント差は僅かに2点! 15年に及んだ「皇帝の時代」の最後の1章を刻むべく、ミハエル・シューマッハ最後の戦いがここから始まろうとしている。

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