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川喜田研●文 text by Ken Kawakita
桜井淳雄●撮影 photo by Atsuo Sakurai(BOOZY.CO)
第45号(2006年4月27日)
復活のシューマッハ──サンマリノGP

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「コレってちょっとデキすぎかなぁ……」と思えるほど、フェラーリにとっては理想的な展開となったサンマリノGP。故アイルトン・セナが持っていた最多ポールポジション記録を更新し、史上最多の通算66ポールポジション獲得を達成したミハエル・シューマッハが、レースでもフェルナンド・アロンソのルノーを最後まで押さえ込んで(ミシュラン勢7チームがボイコットした去年のUSGPを除けば)04年の鈴鹿、日本GP以来、実に1年6カ月ぶりの自力優勝! 前戦メルボルンでの見せた惨めな姿から一転、跳ね馬の完全復活をアピールしてみせた。

 すでにチャンピオン獲得数、優勝回数、ファステストラップ、生涯獲得ポイントで最多記録を更新しているシューマッハが、残された最後の記録、最多ポールポジションをこのイモラで達成したというのも何かの「縁」を感じずにはいられないし、フェラーリの地元イモラでの鮮やかな復活劇に、このところ少々しょぼくれ気味だったティフォッシたちも一気に活気付いたに違いない。追い抜きの難しいイモラだけに、コース上での派手なアクションこそ少なかったが、決勝レース全62周中、トップを走るシューマッハと2位アロンソの差がコンマ5秒以内のラップが実に17周! という数字が新旧チャンピオンの息詰まる戦いを何よりも雄弁に物語っている。

 フェラーリが突如として「息を吹き返した」最大の要因は何と言ってもタイヤだ。前回のメルボルンではブリヂストンのアドバイスに従わずに敢えて旧型のタイヤを選択。その結果、深刻なグリップ不足に苦しんだフェラーリ陣営だったが、イモラではその反省もあって新開発のコンパウンドを使用したタイヤを選択。一発の速さと耐久性を両立した新タイヤの性能が予選、決勝で共にトップレベルのスピードへと繋がった。逆の言い方をすれば、メルボルンでも新型タイヤを選択していれば別の展開になっていた可能性が高いわけで、リスクを恐れて旧型タイヤに固執したフェラーリの「コンサバ」な姿勢が今更ながら悔やまれるが、ともかくも、この新型ブリヂストンタイヤの登場でフェラーリの相対的な戦闘力が大幅にアップしたことが、今後の戦いに大きな影響を与えることは間違いないだろう。

 今回のイモラは予選、決勝ともに路面温度が高く、同時に追い抜きの難しいコースレイアウトであることもシューマッハのレースを助けていたことは事実だが、ブリヂストン陣営は「気温の低いニュルブルクリングでも十分に戦える自信はある」としており、それが事実なら、ここまで優位に戦いを進めてきたルノーにとってはかなり大きな脅威となりそうだ。

 昨年はフェルナンド・アロンソという最年少チャンピオンの誕生で、一気に世代交代の風が吹いたF1GPだが、唯一見ていて物足りなかったのは、ミハエル・シューマッハという一時代を築いた偉大なドライバーが予想外の不振に足を引きずられ、ほとんど「直接対決」の機会がないままにその王座を譲ったことだった。今回のイモラで見せたフェラーリの復活劇は筆者のように「大きな時代の変わり目をこの目で見たい」と願うファンにとって少なからぬ希望を与えてくれたのではないだろうか?

 思い起こせば12年前、若きシューマッハに王座を奪われたアイルトン・セナは再びシューマッハに戦いを挑むべく、古巣であるマクラーレンを離れてウイリアムズ・ルノーに移籍。しかし、結局その思いを果たせぬまま、イモラで帰らぬ人となってしまった。そして、あの日、タンブレロコーナーでセナの直後を走っていたシューマッハもまた、彼の死によって「セナ」という時代を直接追い抜くチャンスを永遠に失ったまま、彼の残した「記録」という亡霊と戦い続けてきたのだ。だからこそ、今年はアロンソとシューマッハのふたりに思う存分戦って火花を散らして欲しい。大きな時代の変わり目を今度こそ、この目でハッキリと見たいと思うのだ……。

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