| 川喜田研●文 text by Ken Kawakita 桜井淳雄●撮影 photo by Atsuo Sakurai(BOOZY.CO) |
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| 第44号(2006年4月7日) | |
【F1】風向きは変わったのか?〜メルボルンで見えてきたこと
今回、多くのチームが頭を悩ませたのが、30度前後という低い路面温度でタイヤが思ったように暖まらないという問題だ。レーシングタイヤはコンパウンドと呼ばれる表面のゴムが摩擦によって暖まり、柔らかく溶けることで驚異的なグリップ力を発揮して止まる、曲がる、走るというマシンのすべての動きを高次元で実現する。F1の場合、タイヤが本来の性能を発揮するためにはその表面温度を100度近くまで上げる必要があるのだが、開幕戦のバーレーンや第2戦マレーシアと比べて遥かに気温の低い今回のオーストラリアではタイヤの温度を十分に上げられず、グリップ不足に悩まされたチームが少なからずあったようだ。 特に苦戦していたのがフェラーリで、ミハエル・シューマッハ、フェリッペ・マッサのコンビは予選から深刻なグリップ不足とバランスの低下に悩み、開幕戦のバーレーンで見せた戦闘力はどこへやら? トップ10を争う予選最終セッションに2台とも進出できないという状況。しかも、決勝レースでは度重なるアクシデントとセイフティカーの導入がフェラーリの苦境に追い討ちをかけ、何とかタイヤの温度が上がったかと思うとセイフティカーでスロー走行、再スタートの繰り返し。 スロー走行で冷えたタイヤが本来の性能を発揮するまでは再びグリップ不足に苦しめられるため、一時は元ミナルディのトロ・ロッソを駆るヴィタントニオ・リウッツィにあのシューマッハが抑えこまれるシーンも見受けられた……。 ちなみに新構造を採用した今シーズンのブリヂストンタイヤは従来に比べて高い耐久性、信頼性を実現した一方で、走行初期のタイヤの暖まりの悪さという弱点を抱えており、開幕戦のバーレーンでは(比較的暖かいコンディションであるにも関わらず)トヨタがこの問題で深刻な不振を経験したが、今回、そのトヨタがラルフ・シューマッハの3位入賞を成し遂げる一方で、フェラーリがタイヤの問題で苦しんでいる状況を見ると、今季のブリヂストンタイヤはかなり「デリケート」な特性を持っているようである。一度ツボにはまり、本来の性能を活かしきれれば高い戦闘力を発揮するが、1歩踏み外すとゴマカシが効かない「スイートスポットの狭いタイヤ」のようだ。長年、ブリヂストンと二人三脚で戦ってきたフェラーリですら、これほど苦しむことがあるのだから、長いシーズンを考えると、これは深刻な問題だと言わざるを得ないだろう。 もちろん、今回のメルボルンでタイヤの暖まりに苦しんだのはフェラーリやブリヂストンユーザーばかりではない。予選でエースのジェンソン・バトンがポールポジションを獲得し「ワークスホンダとして38年ぶりの優勝」への期待が掛かっていたホンダもまた、タイヤの暖まりの悪さ、特にセイフティカー走行後のリスタートでタイヤが十分に暖まらず、ルノーやマクラーレン勢の後塵を拝することとなった。仮に、選択したタイヤのスペックが異なっていたとしても、同じミシュランタイヤでなぜ、あれほどの差が出てしまったのか? これは推測の域を出ないが、その原因はルノーやマクラーレンとホンダの間にある「空力性能」の差であると考えることができる。仮に他の条件が同じでも空的にマシンのダウンフォースが大きければ、その分、タイヤの接地力が高まり、タイヤの表面温度も効率良く上げることができるからだ。気温が低く、条件が厳しいメルボルンだったからこそ、空力性能の差がモノを言う……。 その意味で、今回のオーストラリアGPは優れたエアロダイナミクスがマシンの戦闘力を絶対的に左右するという「現代F1の掟」と、この面におけるルノー、マクラーレンの優位が改めて浮き彫りになった1戦だったといえるかもしれない。 今年からタイヤ交換が復活し、よりソフトなコンパウンドのハイグリップなタイヤが使えるようになったF1GP。本来ならこうしたタイヤのソフト化は耐久性と相反する要素なのだが、ブリヂストン、ミシュランの両者は高度な技術力によって、この相反する要素を可能な限り高い次元で両立すべく激しい競争を繰り広げている。この厳しい条件の中で、いかにスイートスポットの広いタイヤを作り上げるか? また、そのタイヤの性能をいかにして100%引き出すマシンを開発できるか? 低い気温や路面温度のコンディションの可能性がある今後のヨーロッパラウンドではこうした「タイヤの使い方」がシーズン序盤以上に戦いの行方を大きく左右することになるだろう。 |







