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川喜田研●文 text by Ken Kawakita
桜井淳雄●撮影 photo by Atsuo Sakurai(BOOZY.CO)
第43号(2006年3月31日)
【F1】ルノー完勝のマレーシアGP〜富士スピードウェイでのGP開催決定

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「うーん、ホンダ、届かないなぁ……」
 ジャンカルロ・フィジケラとフェルナンド・アロンソの1−2フィニッシュに終わったF1第2戦マレーシアGP。これでルノーは開幕2連勝、混戦のシーズンを期待していただけに、予想以上の強さと安定感を見せるルノーの強さに「ええっ? 独走しちゃうのぉ?」という心配が早くも(ちょっとだけ)アタマをもたげ始める。

 予選2番手につけたホンダのジェンソン・バトンも最後のピットインであっさりとアロンソに先行されてしまい、今季初の3位表彰台も気分は微妙……。コレといったトラブルもなく「ほぼ実力を出し切ったレースだった」(中本修平エンジニアリング・ディレクター)のに、結果としてルノーに歯が立たなかった意味はけっこう重い。「日曜日の路面温度がもっと高ければ、ルノーのタイヤがタレて勝負できた可能性もあるけれど、そういう外的な要素に頼らず、正面から勝つだけの力が我々にまだないというコトです」(中本氏)という率直な現状認識がある事が唯一の救いかもしれない。

 もちろん、悲惨な内容だった去年に比べればホンダの状況は遥かに良くなっているし、コンストラクターズランキング2位になった2004年のフェラーリとの差を考えれば、ルノーはまだまだ射程圏内にいるということができるだろう。ただ、2004年はフェラーリがブリヂストン、BARがミシュランと両チームのタイヤメーカーが異なり、その違いがときに大きなチャンスをもたらすこともあった。ところが、ルノー、ホンダが共にミシュランを履く今シーズンはそうはいかない。

 一見、届きそうに見えるライバルとの差だが、それを詰めるのは簡単じゃないというコトか? 今週、開幕するオーストラリアGPでは何とかルノーにストップをかけ、序盤での独走を阻止してもらいたいところだ。

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 ところで、マレーシアGPの翌週にはビッグニュースが日本のF1ファンにもたらされた。それは富士スピードウェイでの日本GP開催決定。かねてからウワサされていた通り、来年(2007年)から日本GPが静岡県の富士スピードウェイで開催されることが正式に発表されたのだ。

 富士スピードウェイでF1が行なわれるのは1977年以来、実に30年ぶりのこと。昨年、大規模な改修工事を終えてリニューアルオープンした富士はトヨタが所有するサーキットであり、トヨタがF1に参戦を開始した当時から鈴鹿サーキットでのF1開催契約が切れる2007年を目標にF1誘致に向けて積極的な働きかけを続けてきた。今回、富士のリニューアルを監修したのもマレーシアのセパンサーキットやバーレーン、上海など、近年新たに建設されたサーキットの設計をすべて手がけているヘルマン・ティルケというドイツ人建築家でF1のボス、バーニー・エクレストンとも太いパイプで繋がれている人物。トヨタの強力な資金力とこうした人脈とのつながりを考えれば、今回のF1誘致決定も当然の流れといった印象が強い。

「トップチームへと成長したトヨタF1がトヨタの所有する富士スピードウェイでその勇姿を披露する……」というシナリオに向けて、着々と前進し続ける行動力はさすがトヨタ。渋滞対策をはじめとしたサーキットへのアクセスの問題や、F1開催時の宿泊施設の不足など、現時点ではまだ多くの課題や不安が残されていることは事実だが、首都圏に近く、富士山麓の美しい景観を誇る富士で日本GPが開催される意味は大きいと思う。

 ただし、一方で多くのF1ファンが心配しているのが「鈴鹿はどうなるの?」というコトだろう。1987年以来、日本GPの舞台として完全に定着し、今や数あるGPの中でも観客の熱気と独特の雰囲気で「最も熱い」イベントとして知られる鈴鹿の日本GP。中、高速のコーナーがリズミカルに配置されたテクニカルなコースレイアウトはドライバーからの評価も高く、ベルギーのスパ・フランコルシャンと並んで「世界で最もチャレンジングなサーキット」としてその名を挙げるドライバーも多い。その鈴鹿がF1のカレンダーから消えてしまうのはあまりにも残念だ。

 ドイツ(ホッケンハイムとニュルブルクリング)イタリア(モンツァとイモラ)実質的にはフランス(マニ・クールとモナコ)のように日本でも富士と鈴鹿の1国2GP開催は可能なのか? 鈴鹿サーキット側は「2007年以降のF1開催について現在も交渉を行っているとこであります」という声明を発表しており、日本GPのタイトルは富士に移っても、「アジアGP」など別の名称でF1を継続して開催する方策を探っているようだ。富士の日本GPは10月に決まっているようなので、春に鈴鹿、秋に富士……といった形での1国2開催が実現してくれれば、日本のファンにとっては最高なんだけだどなぁ……。

 バーレーン、上海、トルコなど、ここ数年、新たな国での開催を増やすF1だが、今シーズンの開幕2戦、今年が3年目のバーレーンと8年目のマレーシアを見てもサーキット自体の「器」は立派だが、観客の入りは今ひとつ。お世辞にも「F1が定着した」とはいえない状況が続いている。F1の世界拡大路線で各サーキットの誘致合戦は厳しさを増す一方だが、その影響で鈴鹿のように歴史と独特の雰囲気を持ち、ファンの心にしっかりと定着した「熱い」イベントが失われるのはあまりにも残念。日本での2GP開催に向けて、鈴鹿、ホンダ関係者の努力に期待したい!


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