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杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama
戸村 功臣/アフロスポーツ●撮影 photo by Atsushi Tomura/AFLO SPORT

第51号(2008年2月20日)これでは「世界を驚かせる」ことはできない〜東アジア選手権

東アジア選手権、第1戦の相手は北朝鮮(1-1)。力関係を考えれば、勝って当然、試合内容で上回って当然の相手になる。

ところが、メディアの反応はどういうわけか甘い。ショッキングな出来事だと捉える姿勢はほとんどない。「勝ちにも等しいドロー」などと、根拠のないヨイショに走るスポーツ紙さえある。僕は、岡田ジャパンの試合ぶりより、そちらの方にまず首を傾げたくなる。

岡田ジャパンの初戦となったチリ戦で、引き分けた時(0−0)もそうだった。相手は、代表歴がほとんどない若手で固めた2軍。日本に来るために即席で編成された急造チームである。真夏の国から真冬の国へやってきた気候的なハンディも考えれば、日本は勝って当然、内容で上回って当然だ。にもかかわらず「船出は順調」とする大見出しが、あちこちで踊った。

第2戦の相手となったボスニアは、3軍に近い編成だった。そして監督のコドロ氏は、ベンチに入れた選手を全員使わなければならない宿命を抱えていた。相手の置かれた条件を考えれば、後半、相手がメンバー交替をするたびに得点を重ね、3−0で勝利を飾っても大喜びするわけにはいかない。当たり前のことが当たり前に起きたに過ぎないのだ。

4−1の勝利を飾った、第3戦のタイ戦(W杯アジア3次予選)もしかり。喜ぶのは良いが、試合内容は悪かったわけだ。このサッカーでは、岡田サンの言うところの、「W杯で世界を驚かすこと」など不可能だと言わざるを得ない試合だった。

それを受けて北朝鮮戦は行なわれた。そこで1−1の引き分けを演じても、まだヨイショするつもりなのか。代表監督が「世界をアッと驚かせるサッカーを」と言うのなら、メディアもそのレベルに合わせるのが本筋だ。岡田サンが、02年W杯でベスト4に入った韓国を引き合いに出すのなら、報道する側もその気構えを携える必要がある。

僕はW杯ベスト4などという大それた期待は抱いていない。ベスト16で十分だ。心の底では「惜しくも届かず……」でも、オッケーにしたいと思っている。しかし、いくら岡田サンの発言より設定を大幅に下げたところで、岡田ジャパンのこれまでの試合ぶりに合格点はつけられない。北朝鮮に1−1で引き分けをする試合を目のあたりにすると「これは、予選突破がせいぜいだな」と、寂しい気持ちに襲われる。

川淵サンの試合後のコメントからも、怒りの様子は伝わってきた。しかしキャプテンの矛先は、不甲斐ないプレイをした選手に向いていた。自ら任命したばかりの新監督に、立場上ケチはつけられないのだろう。それだけに、メディアは岡田サンの監督としての力量にキチンと目を向けていく必要がある。そのサッカーで世界は驚くのか。ベスト16入りはできるのか。それを抜きにすれば、観戦に張り合いは持てないのだ。生産性のない空騒ぎを繰り広げているだけになる。

加地に、左サイドバックとしての適正がないことは、素人目にも明らかだった。なぜ岡田サンは、トレーニングの段階でそれを見抜けなかったのか。紅白戦で絶対の確証を掴んでからで送り出そうとしなかったのか。左サイドバックには、安田という選手がいるはずである。彼が60分にサイドハーフとして投入されるや、同点ゴールを演出する活躍を見せたから言うのではない。

僕は加地という選手が、不憫に思えて仕方がなかった。彼は彼なりに、慣れないポジションを全力でこなしたはずである。しかし、結果的に上手くいかなかった。その結果は、監督が負うのが当然だ。加地を責めるのは筋違いだ。

安田を左の高い位置でテストした岡田サンのアイディアには賛同する。しかし、だとしたら左サイドバックは、なぜ駒野ではなかったのか。駒野にも左サイドバックとしての適正がそうあるとは思えないが、少なくとも慣れはある。加地より断然適任だ。

加地をテストしたいのなら右のサイドバックで使えばいい。「そこには、売り出し中の内田がいるじゃないか」との反論が聞こえてきそうなので、それにはこう答えたい。「内田を安田同様の高い位置でテストすればいい」と。

本来、右サイドバックの内田を、右サイドハーフでテストすることと、本来、右サイドバックの加地を左のサイドバックでテストすることとでは、どちらの方が難易度が低いかといえば、前者になる。今後、どちらの方が有益かという観点でも、前者になる。

内田と安田。駒野と加地。突破力があるのは、若い2人だ。逆に中堅の2人には安定感がある。ならば上下の関係は、若手組が前で中堅組は後ろが、定石になる。

もちろんこれは、4人のサイドアタッカーをすべて使うという前提になるが、僕は、両サイドにサイドアタッカーを各ふたり配するのが、現代サッカーの定石だと考えている。でないと、世界には通じない。サイドバックとサイドハーフの充実なしに、世界を驚かすことはできないと確信している。

そしてそこに、安田と内田が現れたわけだ。サイドバックもできれば、サイドハーフもできそうなユーティリティ性を備えた期待の若手が。彼らが伸びれば、可能性は膨らむ。メンバー交替はバラエティになる。戦術的交替の選択肢も増える。

安田の少しばかりイキの良いプレイを見ていると、僕は、逆サイドの内田のことがむしろ心配になる。このまま右サイドバックでプレイしていると、平凡な選手に終わる可能性がある。安定感のある従来型の右サイドバックで終わる可能性がある。つまりサイド攻撃の充実は図れない。北朝鮮戦から得た教訓を生かすことはできない。

「サイドを制するものは試合を制す」の意識を、岡田サンがいま以上に持たないと、日本代表の苦戦は続く。僕はそう思う。


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