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浅田真樹●文 text by Masaki Asada
佐野美樹●撮影 photo by Miki Sano

第49号(2007年12月21日)夢想から現実に〜クラブワールドカップで日本サッカーが得たもの

国籍によって、どこでプレイするかが決まっている代表チームと異なり、クラブチームの場合は、世界中の優秀な選手がヨーロッパに集まる仕組みが出来上がっている。さらに言えば、ヨーロッパのなかでも、特定の国の、しかも特定のクラブに、より優秀な選手が集まってくる。

つまり、サッカー界の仕組みとして、クラブの序列ができてしまっている以上(それが望まれたものかどうかは別の話だが)、各大陸のクラブチャンピオンが一同に会し、優勝カップを争うことに、ほとんど意味はない。極論すれば、J1とJ2の優勝クラブが「真の日本一決定戦をしよう」と言っているようなものなのだ。

その点で言えば、クラブワールドカップの存在自体に批判的な意見があるのは、当然のことである。過去、ヨーロッパのクラブが本気になりきれなかったのも、理解できる。
しかし、その一方で、アジアやアフリカのクラブにとっては、それが何物にも代えがたい貴重な機会であることは、疑いようがない。この大会がなければ、浦和レッズ対ACミランという歴史的な一戦も実現することはなかったのである。

試合を終えた浦和の選手たちの間には、悔しい敗戦にも、どこか満足感が漂っていた。

「楽しませてもらいました」

そんな闘莉王の言葉が、まさにその空気を象徴していた。

結果から言えば、0対1というスコア以上の完敗だった。ミランの選手たちが厳しいプレッシャーを受けても、落ち着いてボールをキープし、次のプレイを選択していたのに対し、浦和の選手たちには、慌てた末のパスミスが目立った。個人の力はもちろん、組織という点でも、サイドチェンジに対するプレッシングなどを見る限り、完成度には大きな差があった。

そんなことはやる前から分かっていた。そう言ってしまうのは簡単だ。

だが、今までは、ただ想像することしかできなかった力の差を、現実のものとして目の当たりにできたのである。その意味は、決して小さくない。

「何回かは危ないシーンがあったけど、安心して見ていられた。うちよりもミランのほうが、焦っていたんじゃないかな」

ベンチから戦況を見つめていた山田暢久の言葉通り、実力差を考えれば、悪い試合ではなかった。

それでも、細貝萌が「パススピードは速いし、判断も速い。すべての面でスピードが違った」と振り返るヨーロッパチャンピオンは、一瞬のスキを見逃してはくれなかった。坪井慶介は言う。

「あそこは、(カカに)ついていくので精一杯。最後は足が出なかった」

68分、左サイドを突破したカカのクロスを、セードルフが左足で合わせ、ミランが先制。浦和はこれで万事休した。

この大会だけを取り上げて、「浦和、世界3位!」とテレビや新聞が伝えていることには正直違和感がある。その理由は、冒頭ですでに述べた通りだ。しかし、このミランとの一戦が、浦和という一クラブに限らず、日本サッカー全体にとって、大きな財産となったことは間違いない。

クラブワールドカップは今回で3回目の開催である。すでに2年前から、日本のクラブがヨーロッパや南米のクラブにガチンコ勝負を挑む機会は用意されていたわけだが、現実のものとはならなかった。我々は、ただ夢想することしかできなかった。

ところが、今回、それを目の当たりにした。そして、感じたのである。簡単には縮まらない力の差を見せ付けられた絶望感と同時に、日常の世界と夢の世界が突如結びついたかのようなワクワク感を。

今回の一戦を、多くのJリーグ関係者が見たことだろう。もちろん、現役の選手たちも。とすれば、これが来季以降へのモチベーションにならないはずがない。

浦和が優勝したことで、確実にAFCチャンピオンズリーグの注目度は上がり、ステイタスも高まった。そして、その先には、ミランのようなクラブとのガチンコ勝負が待っていることも、多くの人々が実体験として、知ったのである。

単なる一試合ではある。そこでは、浦和が力及ばず、ミランに敗れたにすぎない。だが、その単なる一試合は、Jクラブのあり方を変える、大きなきっかけになったのではないだろうか。


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