藤田真郷●撮影 photo by Masato Fujita
第47号(2007年10月23日)逆転負けも、依然優位な日本の立場〜北京五輪アジア最終予選
勝てば、北京五輪出場権をほぼ手中に、引き分けでも、本大会へ大きく前進することになったカタール戦で、U−22日本代表は先制しながら、逆転負けを喫してしまった。
日本にとっては、勝ち点差を考えれば、引き分けでも十分な試合。とりわけ後半は、つたない試合運びだったと言わざるをえない。
最終予選の初失点で同点に追いつかれたことは、少なからずショックだっただろうが、そのまま試合を終わらせることは、さほど難しいことではなかったはずだ。実際、キャプテンの水本裕貴は「DFラインでは、このまま引き分けでいい、しっかり守りきろうという意思統一はできていた」という。
だが、なまじ後半に追加点のチャンスが数多くあったことで、攻撃陣はゴールへの欲望を抑え切れなかった。その結果、不用意に攻撃に出てはボールを失い、前線での守備が淡白になって、カタールの攻撃をスピードに乗らせる結果につながった。
ボランチの細貝萌は言う。
「自分が10番(ワリード)にマンマークでついて下がると、本来のボランチのポジションのところが空いて、そのスペースに(相手選手に)入られてしまった」
それほどカタールの攻撃が怖かったとは思わないが、次第にスピードに乗り、勢いが増していったことは確かだ。水本は「PKを取られたことよりも、簡単にあそこまでボールを運ばれた過程が問題」と振り返った。
かなりのゴールチャンスがあったことも事実であり、追加点を奪いに行くことは当然の選択ではあった。しかし、実際には確実につなぐべきマイボールを簡単に相手に渡してしまうミスが非常に多かったことも事実であり、不安定な状態で試合は推移していた。それだけに、例えば、残り時間5分を切ったところからは守備に集中する、といったように、もっと明確にチームとしての逃げ切り策が徹底されるべきだった。
「ピッチで戦っているのは自分たち。ベンチからの指示を待つようではダメ」
水本はキャプテンらしく、そう話してはいたが、ベンチワークも含め、戦い方に一体感が欠けていた印象は否めない。
とはいえ、これまでの試合に比べ、この試合に限って、極端に内容が悪かったわけではない。というより、内容が悪いのは(さらには、前半終了間際にCKから得点するというパターンまでもが)いつものことだ。これまでと違ったのは、その後、同点にされ、逆転されたという結果だけである。
これまでの一連の試合内容を考えれば、アジア予選初めての敗戦も、来るべきときが来たというにすぎない。はっきり言って、いつ負けても不思議ではなかった。いまさら、取り立てて慌てる必要はない。
しかも、数字上は勝ち点7でカタールに並ばれたとはいえ、依然日本が優位な立場にいると考えていい状況だ。
というのも、このグループの4カ国を見たとき、明らかに力が劣るのはベトナム。つまり、他の3カ国にとっては、ベトナムから確実に勝ち点6を取れるかどうかが、予選突破のカギだった。その点で言えば、カタールはベトナムとアウェーで引き分けており、すでに勝ち点を取りこぼしているのである(それは、サウジアラビアも同様だ)。
加えて、カタールはアウェーのサウジ戦を残している。この試合には、サウジ勝ち、引き分け、カタール勝ちという3通りの結果がありうるわけだが、客観的に見て、カタール勝ちの可能性が最も低い。日本は残り2試合に勝ちさえすれば、問題なく、北京行きを決められるはずである。
にもかかわらず、初の敗戦後、あまりにも監督、選手の表情や口調が、暗かったことが気になった。まるで、予選突破が絶望的にでもなったかのような落胆ぶりである。嫌な負け方ではあった。選手たちにとっては、内容が悪いなりに最終予選を勝ち抜く自信のよりどころとなっていた無失点が途切れ、最後はロスタイムにPKを与えて逆転負け。少なからず、ショックはあるだろう。
しかし、どんなに悲観的な視点に立っても、振り出しに戻ったにすぎず、それ以下ではありえない。11月17日、ハノイできっちりとベトナムから勝ち点3を奪い取りさえすれば、北京への視界は確実に開けるはずだ。
ただし、この敗戦のショックが尾を引くようだと、稚拙な試合運びの代償は、あまりにも高くつくことになる。






