高橋 学●撮影 photo by Manabu Takahashi
第46号(2007年9月21日)出来上がりつつあるオシムジャパンの土台〜ヨーロッパ遠征
オシムが監督に就任して以来、初となるヨーロッパへの遠征を、日本代表は1勝1分けという結果で終えた。しかも、3大陸対抗トーナメント優勝である(大会方式が分かりづらく、そもそも大会に出場しているという実感自体、選手にはほとんどなかったが)。敵地に乗り込んでの成果としては、十分なものと言えるだろう。
それは結果ばかりではなく、内容についても言えることだ。
とりわけ、育成年代の強化から地道に力をつけ、昨年のワールドカップでもベスト16に進出したスイスとの一戦は、見応えがあった。アジアカップでは、相手に引いて守備を固められ、どうしてもスペースがない状態で攻撃しなければならないことがほとんどだったが、この試合は違った。
立ち上がりの日本はひどかった。攻守ともに落ち着かないまま、あっという間に2失点。しかし、4点を挙げた後半はもちろん、2点をリードされた前半なかばからすでに、スイス・ディフェンスを揺さぶり始めていた。横パスをつなぎながら、松井大輔、遠藤保仁などが、DFラインの裏へ走りこむ。コンパクトに守備のブロックを整え、DFラインを高く保つスイスに対し、日本は横パスを動かしながら、DFライン裏のスペースを狙っていた。
二重三重にカバーが備えるアジアとの戦いに比べると、一度裏を取れれば、相手の守備が追いついたとしても、1対1の状況はできやすい。そこで効果的だったのが、松井のドリブル突破である。これが反撃のPKにつながっただけでなく、いくつかのチャンスを作っていた。
しかも、この試合では、松井の仕掛けに触発されるように、山岸智、駒野友一も果敢に縦へ仕掛けるようになっていた。パスをつなぎ、最後に仕掛ける。強敵と見られたスイスを相手にしても、そうした流れからチャンスを作り出すことができていた。それでも、一度は勝ち越しながら、試合終了直前まで3対3。アジアカップの勝ちきれない流れが、まだ続いているのかと思われた。しかも、3得点はPK、FK、PKで、またぞろ「流れのなかからは、点が取れていない」などという批判を受けそうな状況だった。
ところが、ロスタイムに闘莉王を前線に上げるパワープレイから、分厚い攻撃を見せ、矢野貴章が決勝ゴールを叩き込んでの勝利。最後は壮絶な打ち合いを制した。
この一戦は、日本代表がヨーロッパのセカンドクラスとアウェーで対戦しても(厳密に言えば、完全なアウェーではないが)、これまでオシムが段階的に作り上げてきたサッカーが、ある程度発揮できる段階にあることを証明した。と同時に、日本人の特徴を生かした「人とボールが動くサッカー」が、「まともにサッカーをやってくれる相手」に対して有効であることも証明している。スイスよりも明らかに力が劣っていたオーストリア相手に、アジアカップ同様、日本が圧倒的に押し込む展開になりながら、スコアレスドロー(PK戦負け)に終わったのと対照的だった。
無得点に終わったオーストリア戦に関して言えば、アタッキング・サードに入った後での崩しについて、アジアカップで露呈した課題が解決されたとは言いがたい。それでも、稲本潤一から中村俊輔へのスルーパスや、中村憲剛のミドルシュートで相手ゴールを脅かすなど、アジアカップは確実に薬になっている。
選手選考についても、新たな進展が見られた。これまでは高原直泰、中村俊の独壇場だった海外組からの選出に、これで稲本、松井も加わったと考えていい。両選手ともに、これまでのチームにはなかったアクセントをもたらしていた。彼らにそれができたのも、国内組によってチームのベースが、しっかりと作られていたからであろう。もちろん、細部の修正点はいくらでもあるが、土台となるサッカーは出来上がりつつある。
引いて守る相手に苦しみ、アジアカップでは悪いイメージばかりが先行してしまった感のある日本代表。だが、そのサッカーは確実に前へ進んでいることを印象づけた、オーストリア遠征となった。







