高橋 学●撮影 photo by Manabu Takahashi
第44号(2007年9月11日)オシムジャパン、得点力不足の原因は〜オーストリア戦
オーストリア代表の、選手個々のボールさばきは、日本代表選手に比べると1枚も2枚も落ちる。鈍臭く感じるほど上手くない。その点だけを比べれば、日本の3−0が順当な結果に思える。だが、現実の結果は0−0だった。それはなぜか。アウェーの不利が、結果に大きな影響を与えたとは思えない。試合内容そのものに問題があると見るべきだろう。
真っ先に目につくのは、得点力不足だ。これについては、オーストリアの監督からも同情を買ったほどで、疑いのない事実だといえる。しかし、僕はそのことについて、今さら声を上げる気にはとてもならない。何十年来続く、これは言ってみれば日本の「伝統」だ。だったらどうすればいいのかと、得点力不足を前提にしてモノを考えていかなければ、非建設的な議論に陥る。FWを悪役にするモノの見方は、封印した方がこの際、得策。改善可能な箇所に目を向けることが、強化は効率的に進むものと考える。
得点力不足のFWに対し、いわゆる中盤の巧みなボールさばきは、日本を良い意味で象徴する、最大のセールスポイントになる。日本のFWの実力を偏差値に直せば40台になるのは確実だが、中盤には
50台の真ん中辺りは十分いけそうな力がある。しかしそれは、相手に十分な威力として、効率良く伝え切れているだろうか。
オーストリア戦で、日本が掴んだ決定的なチャンスはわずかに3回。得点力不足のFWが、決定的なチャンスを外しまくったわけではない。得点力不足以外にも問題はあるわけだ。自慢の中盤に問題はないのかと言いたくなる。
オシム監督に、守備的MFのポジションで初めて起用された稲本は、合格点のプレイを披露した。それだけに、それよりさらに深い位置で構える守備的MFのもうひとりのプレイが貧弱に見えた。オシムジャパンでフルタイム出場を果たしているにもかかわらずだ。
鈴木啓太は、そこまでの選手なのだろうか。彼はこの試合でも、数多 くのミスを犯している。相手の力量がもう少し上ならば、致命傷になっていたかもしれないミスも、その中に含まれていた。そのプレイは確かに献身的だ。だがボール操作はおぼつかない。視野も狭ければ、キックの正確性もない。この試合ではその負の部分の方が、多くのシーンでデフォルメされた。
しかし彼は、この試合もフルタイム出場を果たした。相棒役の稲本が、試合途中で中村憲剛にその座を譲る姿とは対照的だった。
とりわけ前半、4−4−2の布陣で戦った日本代表は、遠藤と中村俊輔が、低い位置まで下がるシーンが目についた。鈴木啓太の不安定なプレイとそれは深い関係にある。よって高い位置に人数不足を招いた。攻撃が遅くなる原因、サイド攻撃が利かない原因にもつながっていた。いつの間にか布陣は、高い位置で幅のない4−2−2−2
の状態になっていた。これではパスはつながっても、チャンスは生まれにくい。
後半26分、オシムは田中達也と稲本に替えて松井と中村憲剛を投入。布陣はそれとともに4−2−3−1に変化 した。中村憲剛は稲本のポジションにそのまま収まったが、松井はその1トップ下に入ったわけだ。
だからといって、決定的なチャンスが訪れたわけではない。しかし、少なくとも流れはこれでずいぶん良くなった。4−2−3−1の「3」を務める3人が、左(遠藤)、 中央(松井)、右(中村俊)に確実にポジションを取ることができたからだ。日本の攻撃には高い位置で、チャンスメイクには欠かせない幅が生まれることになった。
しかしその分、FWはふたりからひとりに減ったわけだ。例の 3人に、つなぎだけではなく、決定力に通じる縦への推進力を発揮してもらわないと、得点は生まれにくくなる。
松井にはそれがある。10段階評価で7に相当する力がある。だが、遠藤の場合は5.5だ。中村俊に至っては4.5になる。
必ずしも適役とはいえない選手が3人中のふたりを占める。守備力が極端に低い中村俊は、それでもこのポジションで使わなければならない選手になるので致し方ないが、遠藤の場合はどうだろうか。大分で行なわれたカメルーン戦後の記者会見で、オシムは「遠藤には守備力が欠けている」旨の発言をしている。だが、それを言うなら、中村憲はどうなのだと言いたい。中村憲の守備能力と遠藤の守備能力との間に大差があるとは思えない。
遠藤をひとつ下のポジションで起用するオプションがあっても良いのではないか。そうすれば4−2−3−1の 「3」のポジションに、彼より推進力の高い選手を起用することができる。サッカーはよりオフェンシブになる。
オーストリア戦の終了直前に、サイドバックの駒野と交代でピッチに入った今野にも、異なるポジションでの起用を求めたい。彼がサイドバックで出場する意味が、僕には全く分からない。鈴木啓太のポジションで、なぜ試そうとしないのか。ケガのために参加を見合わせた阿部もしかり。なぜ、彼の起用されるポジションは、バック中心なのか。
阿部、今野には、献身的なプレイもあれば、繋ぎのプレイをこなす攻撃センスもある。4−4−2でも、鈴木啓太を起用するより良いバランスが保たれそうである。
中盤にはまだまだ改善の余地がある。なぜオシムは、積極的に可能性を探ろうとしないのか。時間はまだたっぷりあるというのに、「固定化」を急ぐのか。人材豊富な中盤の駒を、どう効率的に配備するか。得点力不足解消のカギは、ここにあると僕は思うのだが。






