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杉山茂樹●取材・文 text by Shigeki Sugiyama
藤田真郷●撮影 photo by Masato Fujita

第42号(2007年8月3日)【アジアカップ】オシムさん、いったいどうして?〜大会総括

優勝イラク。準優勝サウジアラビア。3位韓国、4位日本……。今回のアジアカップの成績が、実力をストレートに反映したものであるか否かについて、絶対的な確信を抱くことはできない。サッカーには、運の占める要素が3割ある。日本はもう少し運に恵まれれば、優勝していたかもしれないし、運に恵まれなければ、ベスト8に沈んでいた可能性もある。

日本が戦った6試合の内訳は2勝3分1敗。その中で、相手に赤紙退場者が出た試合は3試合。PK戦は1勝1敗の五分なので、全体としては、運に恵まれた大会だったと言うべきだろう。4位という成績も、少し割り引いて考えなければならない気がする。

百歩譲っても、日本が、誰もが認めるナンバーワンではない点だけは、認めないわけにいかない。内容についてもしかり。日本が、特筆すべき良いサッカーをしていたわけではない。上り調子にあることを披露したわけでも、可能性を示したわけでもない。成績、内容、将来性。すべてにおいてイマイチだったわけだ。

それを考えると、オシム監督が、3位決定戦に敗れた後の記者会見で吐いた台詞には、納得いかない点が多かった。

「日本はどの試合でも、自分たちのペースで試合を進めた」には「相手に退場者が出たこととそれは大きな関係がある」と反論したくなるし、「リスクを冒したサッカーをした」と胸を張ったことについても「他のチームだって、いずれの国も方向性は似ていた」と、切り返すことができる。

また、「トルシエ監督やジーコ監督より、我々の方が良いサッカーをしている」については、おおむね納得するものの「比較対象のレベルが、低すぎやしませんか? 目指すレベルはその2歩も3歩も上ではないですか?」と、首を傾げざるを得なくなる。

さらに言えば、「走るサッカーはどうしちゃったんですか」と、訊ねたくなる。駒野や加地は、例外になるが、全体的にパスは目立っても、パス&ゴーを見かけるシーンは少なかった。「暑かったから」と言われれば、「それは初めから分かり切っていたことでしょ」と反論したくなるし、「むしろ他国の方が走っていましたよ。3位決定戦では、韓国の方が確実に走っていた」と、さらに追い打ちを掛けたくなる。

少なくとも僕は、これまで「オシムの言葉」には、納得させられることばかりだった。「その通り!」と、思わず膝を叩きたくなる台詞が大半を占めていた。個人的な支持率は、80%近くにまで及んでいた。それが、アジア大会を経て一転。いまや支持率は40%台にまで落ち込んでしまった感じだ。

合点いかない台詞は、このほかにも目立った。客観的に考えて、言い訳の部類に入る台詞も、いくつか耳にしている。オシムの言葉に、従来抱いたカリスマは感じられなくなっている。

日本の演じたサッカーは、典型的なパスサッカー、中盤サッカーだった。4−2−3−1の布陣で臨んだ韓国戦(3位決定戦)を例に取ると分かりやすい。

山岸、遠藤、中村俊輔が並ぶ「3」は、本来、ゲームを作る場所ではない。すると決める人は、高原オンリーになる。3には、ゲームメイク力と、決定力を50対50の関係で発揮してもらわないと、決定力不足に陥るのは明らかだ。それにぎりぎり適っているのは山岸のみ。

遠藤と中村は、90対10で「作る」になる。この 4−2−3−1の「3」を務める選手に、前への推進力が欠ける点こそが、オシムジャパンの現実だ。「作る」が「2」を意味する世界基準から、大きく外れている。パスサッカー、中盤サッカーに陥る最大の原因だ。同じ布陣で戦ったイラク、韓国などと「3」のキャラを比較すれば、違いは一目瞭然になる。

また日本は、サイド攻撃でも弱さを露呈した。右MFの中村俊輔は、気がつけば中央でプレイしていた。まさしくゲームメーカー役に収まっていた。すると、右のサイド攻撃は、加地ひとりに頼ることになる。相手に、文字通りの4−2−3−1や4−4−2で臨んでこられると、右サイドの関係は1対2になり、数的不利を招く。加地が攻撃参加に及ぶ回数は激減する。

日本が4−4−2で臨んだ場合は、左サイドでも同様な症状が起きる。遠藤もまたゲームメーカータイプだ。中村俊輔ほどではないが、内に絞る傾向がある。左サイドバックの駒野に掛かる負担は、途端に増大する。

駒野、加地の両サイドバックへの今回の評価は、概して低いが、彼らには言い訳がたっぷりあることを忘れてはならない。彼らに無理を強いるサッカーこそが、今回のオシムジャパンの姿だった。

オシムは最後までそのやり方を貫いた。パスサッカー、中盤サッカー、真ん中固執サッカー、ゲームメーカーサッカーが、悪循環に陥っていたにもかかわらず、敢えて是認した。例えば、途中交代で羽生が出場しても、方法論に変化は見られなかった。彼は、ドリブルが得意なキャラであるにもかかわらず、サイドより真ん中で、多くの時間構えていた。

オシムさん、いったいどうして?

メンバー交代が遅れ気味だった点も、不満に輪を掛けるが、今回のオシム采配は、総じて冴えを欠いていた。大胆さもなければ、アイディアの絶対数にも欠けた。少なくとも、ナンバー1監督の名を、この大会で欲しいままにしたわけでは全くない。

日本の目標は、アジアカップ優勝ではない。来る2010年W杯でベスト16入りすることだ。これは、1ランクどころか2ランク、3ランクステップアップしないと望めない成績だ。そのためには、世界でも指折りの、凄腕監督の存在が不可欠になる。今回のオシム采配には、そういった意味で疑問符が付く。

オシムは本当にスーパーな監督なのか。「スーパーに違いない」は、思い込みに過ぎなかった可能性が出てきたことになる。放っておくと突破を忘れ、勝負を避けた安易なパスに走る日本人選手に、異なるメンタリティ、方法論を叩き込む指導者でないと、目標は永遠に達成されないんじゃないかと僕は思う。


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