藤田真郷●撮影 photo by Masato Fujita
第41号(2007年7月30日)【アジアカップ】オシムジャパン、敗戦〜トラブル発生
予兆は、準々決勝(豪州戦)からあった。最初のメンバー交替が後半43分というのは、どう考えても遅い。遅すぎる。ふたり目の交替(延長前半12分)も、3人目の交替(延長後半10分)も同様。普通ではない采配をオシムは行なった。豪州が後半30分に、赤紙退場者を出したため、日本は以降、圧倒的有利な立場に置かれていたにもかかわらず、交替を躊躇った。
23人が、チームとして機能していないことを物語るなによりの現象だ。先発以外に信用されている選手が、極端に少ないという事実に加え、サッカーゲームの進め方に、オプションがない現実も暴露された。持ち駒を巧みに操り、チャンネルの切り替えをスムーズに図るのが、名将の条件とすれば、オシムは、そこから外れることになる。
準決勝(サウジ戦)に行なった最初の交替は、後半23分。巻と佐藤寿の入れ替えだ。日本はその11分前に、サウジアラビアに3−2と勝ち越されていた。このまま手をこまねいているのは、マズイ状況だった。手は、即刻打ちたかった。そういった意味で、この交替は5分遅い。
ふたり目の交替は後半28分。羽生と遠藤の入れ替えである。そして3人目の交替は、後半43分。残り時間2分の段階で、中村憲を下げ、矢野を投入した。
羽生イン、遠藤アウトには、サイド攻撃をより充実させようとの意図が感じられた。オプションのひとつを披露しようとしたわけだ。しかし結果的に、羽生は従来の流れの中に埋没した。羽生がサイドをえぐろうとしたシーンはわずか。ピッチに立つ先発組に、積極的に彼を使おうという意図は感じられず、また羽生自身も、特別開いて構えたわけではない。 個性を戦術の中に生かすことができていなかったのだ。
矢野イン、中村憲アウトは、バランスを崩しても点を取りに行く気概を感じさせる交替だが、残り2分で結果は望めない。これも、遅すぎる交替となる。
この大会を通して日本が披露したものは、典型的な中盤サッカーだった。中村憲、遠藤、中村俊輔のパス回しを軸に、攻撃は組み立てられていた。しかし豪州戦も、中国戦も、それは功を奏さなかった。相手のディフェンスラインの前で、いたずらにパスを回しているだけで、攻め切ったシーンはほとんどなし。相手にむしろ、歓迎すべきサッカーになっていた。その結果、逆にパスをカットされては、たびたびカウン ターを浴びた。ボールの奪われ方が、なにより悪かった。日本は、良いサッカーを展開していたわけでは全くない。
相手とボールを同時に、視界の正面で捕らえる事ができれば、守備者の仕事は楽になる。その中をかいくぐってゴールを生み出すことは、高度な技術を持ってしても、イージーではない。豪州戦も、サウジ戦も、日本はそうした深みの中にはまっていた。一見、巧そうには見えた。が、効果的でも効率的でもない。攻め切る前にボールを奪われる危険が高いので、逆襲を食う可能性も高い。日本の中盤サッカーは、そうした 危険を孕んでいた。
だがオシムは、中盤サッカーを肯定した。というより、固執したというべきだろうし、結果を踏まえれば、心中した感さえもある。サッカーゲームの進め方は、終始同じだった。
試合後の記者会見でオシムは「中心選手が疲労で、独創性を発揮できなかった」と、述べた。しかし、サウジ戦前の記者会見では「固定メンバーで戦えば、同じ選手に疲労が溜まるのは当然。それを知って使うわけだから、その責任は監督にある」とも述べている。試合後の記者会見では、自らの責任を認めたことになる。しかしその場でオシムは「疲労、疲れ」を何度となく口にしている。言い訳にならない言い訳を繰り返した。ジャカルタからの移動を含む中2日の強行軍を強いられたサウジより、遥かに優位な条件で試合に臨んだというのに、である。
オシムはいったいどうしちゃったんだろう。敗戦から得る財産のことを誰よりも強調する人物が、ガチガチのメンバーで連戦に臨み、そして敗れると、言うべきではない言い訳を連発した。彼らしくない振る舞いである。余裕が感じられなかったことは事実だ。第3戦のベトナム戦を前にしたあたりから、早くも、テンパっているような気配が見え隠れした。
暑さのために、走るサッカーができないことがイライラの原因なのか。しかしハノイが、それができそうもない環境にあることは、初めから分かり切っていたはずだ。東南アジアに限らず、アジアには、走ることを求めても、実現不可能な場所は数多く存在する。走るサッカーは良いけれど、それができない場合は、何をテーマに掲げて、試合に臨めばいいのか。
「走るサッカー」に対して、かねがね僕は抽象的な印象を抱いていたが、それができなかった今回は、一転「中盤サッカー」に変身してた。ジーコサッカーに、逆戻りした印象を抱いた人も少なくないはずだ。
とにかく内容が悪かった。内容が良かったにもかかわらず……なら、楽観的でいられるが、今回の場合はそうではない。トラブル発生! と、声を大にして言いたくなる。





