藤田真郷●撮影 photo by Masato Fujita
第40号(2007年7月17日)【アジアカップ】オシムジャパン、予選リーグ1位通過〜アジアのレベル
気温30度、湿度87%という過酷な気象条件の中で、日本 はUAEを相手に、良い試合をしたと思う。第1戦(カタール 戦)とはうってかわり、実力差を点差に結びつけることに成功した。
それは、高原が期待通りの活躍をしていることと、深い関係がある。彼は、この1、2年で一皮も二皮も抜けた気がする。具体的には、プレイに余裕がうかがえるのだ。それでいて、常に狙っている様 子も見て取れるし、相手に恐怖感を与えるストライカーに変貌した。ドイツで苦労しながら、ここまで成長した彼には、盛大な拍手を送りたくなる。
第1戦で気になった中村俊輔のポジショニングも、攻撃の流れに不具合を生じさせることはなかった。真ん中でボールを受け、司令塔然と振る舞うことはなかったのだ。それは布陣が4−2 −3−1から4−4−2に変化したことと無関係ではないだろう。右のサイドハーフの位置は、4−4 −2の方が外しにくい。真ん中に入り込めば、日本の右サイドがポッカリ空くことは目に見えている。誰かがカバーに回ることはできにくいのだ。監督の布陣変更も吉と出た気がする。
しかし、この2戦を通してまず言うべきことは、相手の低レベルだ。カタールも、UAEも「相手に不足あり」のチームだった。第3戦の相手、ベトナムもしかり。日本とは 2ランクぐらいの開きがある。ここでグループリーグ落ちしたら、それこそ日本代表に対外試合禁止の罰を科したくなるほどの大問題。
焦点は準々決勝以降の戦いだ。2010年を目標に据える日本にとっては、ここからが本当の戦いになる。オシムではないが、僕も3連覇にはこだわっていないクチだ。2010年に向け、可能性を感じさせる戦いを披露することが肝心。勝っても負けても、内容には厳しい目を向ける必要がある。内容には目もくれず、勝てば官軍とばかり優勝に沸き返り、浮かれムードのまま本番に向かうことになった前回大会以降の悪い流れを、忘れるべきではない。
すべてについて、W杯のベスト16のラインから、フィードバックして考える必要がある。UAE戦に3−1で快勝したからといって、少しも喜ぶことはできないのだ。
とはいえ、感心した点を少し付け加えれば、その後半の戦いぶりだ。日本は相手が後半7分に、赤紙退場者を出し10人になった にもかかわらず、追加点を奪えず、逆にカウンターから失点を喫している。一見、あまり良い戦いぶりには見えないが、それを事故と考えれば、評価はガラリ一変する。
その他の時間帯では、日本はボールをほぼ完璧に支配した。ピッチの隅々をよく使い、ボールを広い範囲に散らすことに成功した。中村俊輔に替わり、水野が出場すると幅はさらに生まれた。それは結果として、省エネにもつながっていた。効率的な支配をしたわけだ。UAEに対し、レベル差通りの大人っぽいサッカーを披露したといってもよい。シュートがもう一本決まっていれば、ケチの付けようがない終わり方だった。
「可能性」を感じたことも確かである。これまでの代表チームからは、ほとんど拝めなかった芸当だと思う。少なくとも僕好みのボール回しを、彼らがしていたことは間違いないし、また僕がサポーターなら、そのパス回しに「オーレ。オーレ」のかけ声を送っていたことも、また間違いない。
もうワンランク上のチームとの対戦で、これに近い芸当ができれば文句なし。その日が早く訪れてくれることを期待したい。
裏を返せば、低レベルの試合に、ジリジリしているというのが本音だ。アジアのレベルはまだまだ低い。おまけにこの暑さも加わる。真剣勝負の場に、これほど相応しくない場所も珍しい。アジアのレベルを上げたいなら、高いパフォーマンスが期待できる環境が不可欠だ。
4か国開催の狙いは「普及発展」にあると思うが、アジアサッカー連盟(AFC)とFIFAの立場は違う。普及発展を願うのは FIFAで十分。こちら(アジア)としては、なによりレベルを上げていく必要性がある。アジア杯は、そのまたとない舞台になるのが本筋だ。 スーパープレイが連続しそうな環境で行なわれなければならない。
UAE戦から3日後の本日、日本は開催国ベトナムを4−1のスコアで下した。過酷な気象条件に、アウェーのハンディ も加わる中、オウンゴールまで許す苦しい展開を強いられたが、日本は無事、グループリーグを首位通過することに成功した。
英国3大ブックメーカーのひとつである「Coral」によれ ば、日本の優勝予想オッズは2.5倍でトップ。以下、イラ ン(3倍)、豪州(3.5倍)、イラク、サウジ(ともに7倍)、韓国(8倍)、中国(10倍)と続く。日本はどこよりも順調そうに見えているようだ。
今後の課題は、だからといって受けに回らないことだ。キチンと効果的な攻めができるか。繰り返すが、内容が伴わない勝利を、諸手を挙げて喜ぶわけにはいかないのだ。







