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杉山茂樹●取材・文 text by Shigeki Sugiyama
藤田真郷●撮影 photo by Masato Fujita

第39号(2007年7月11日)【アジアカップ】初戦引き分けのオシムジャパンの課題〜中村俊輔のポジション

後半42分、カタールのセンターフォワード、セバスチャン・キンタナの蹴ったフリーキックは、日本の壁が一斉にジャンプしたためにできた、足下の隙間を抜けていった。

Jリーグでは、あまりお目にかかれないキックだったように思う。フリーキックの弾道といえば、ほとんどが壁越しだ。浮かして曲げるか、浮かして落とすか。本田圭佑や三浦淳宏のように、インステップでブレ球を蹴る選手もいるが、これは距離が離れている場合に限られる。またキッカーにも、MF系が圧倒的に目立つ。本格派の ストライカーが、ズドンと直線的なキックをすることは希だ。セバスチャンの「足下ズドン」は、日頃から学習を積んでいなかった盲点を突かれたキックといえるのだ。

だが蹴る前から、そのムードは漂っていた。キッカーのキャラを踏まえると、ここは足下ズドンしかない。そう思った矢先の失点だっただけに、ことのほか歯痒く感じられる。

しかし、この不本意な1−1は、フリーキックの対処の悪さだけが原因のすべてではない。なぜ、あれだけボールを支配していながら、1点しか奪えなかったのか。

無駄なパス、無意味なパス、無難すぎるパス、つまらないパスが多すぎるのだ。横にいる選手にただ付けるだけのパス、渡すだけのパスが、日本ほど多い国も珍しい。縦横のバランスが悪い上に、長短のコンビネーション、サイドチェンジが挟まれていないので、パスはつないでも、局面の打開にはつながっていないのだ。

オーソドックスなスタイルでは全くない。際物といっても良いくらい だ。異端が選手に染みついてしまっている。豪州や韓国のサッカーの方が、ずいぶん「普通」に見える。

サッカーの目的はゴールを奪うことにある。少なくとも、マイボールになれば、その目的に向かって邁進しなくてはならない。だが、日本のサッカーはけっしてそう見えない。パスを変に重視するあまり、目的にブレが出てしまう。完遂能力は自ずと鈍る。

具体的に言えば、中村俊輔がピッチの中に入ってしまうことと、それは深い関係にある。彼のポジションは、4−2−「3」−1の「3」の右だ。ポジションチェンジすることを悪いと言うつもりはないが、基本的には「3」の右。にもかかわらず、気がつけば彼は内に絞り込んでいる。ポジションはセルティックと同じながら、セルティックより断然その傾向は強い。

するとピッチの中央には、「2」の片割れで、鈴木啓太より上がり目で構える中村憲剛と、遠藤保仁と中村俊輔のパッサー3人が、近距離で固まることになる。

いっぽう、受ける選手は「3」の左サイドの山岸と、1トップ高原のわずかにふたり。出す選手と受ける選手のバランスに難が生じる。

中村俊輔がサイドに開き気味で構え、半分受ける側に回っていない現実には、問題ありと言わざるを得ない。セルティックでできていることが、なぜ日本代表ではできないのか。組み立ててやろうという自意識が強すぎるからなのだろうか。中村俊輔がサイドに出て、タテに出るプレイを何度かしてくれないと、サイドバックの負担も大きくなる。

現地ハノイは、暑い。加地がタテを元気よく往復できる環境ではない。中村俊輔が、そのタテの長いエリアを、ある程度カバーしてくれないことには、左右のバランスにも乱れが生じる。攻撃にスピードも生まれない。アクセントも生まれなければ、美しさも生まれない。

オシムはいったい中村俊輔のプレイをどう見ているのか。頭を悩ませていることは、間違いないと思うのだが。


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