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浅田真樹●文 text by Masaki Asada
藤田真郷●写真 photo by Masato Fujita

第38号(2007年6月12日)チームの骨格が見えた日本代表〜キリンカップ

3年ぶりに日本代表が優勝を果たしたキリンカップ。日本代表の強化を目的に、毎年この時期開かれている国際大会ではあるが、今年の場合、いくつかの点において、大いに注目を集めることになった。

ひとつには、3連覇がかかるアジアカップを前にした、最後の国際試合であるということ。そして、ヨーロッパ組が本格的に合流する初めての試合だということである。

まず、約1カ月後に控えたアジアカップの準備としては、上々の内容を見せた。

モンテネグロ戦では、DFラインからしっかりとパスをつなぎ、攻撃を組み立てることができていた。ボランチと連係しながら、中澤佑二、坪井慶介のセンターバックがワイドに広がってパスをつなぎ(かなり危なっかしいシーンも多かったが)、阿部勇樹、駒野友一の両サイドバックを高い位置に押し出す。これらのことは、いわば、ビルドアップの基本。だが、ジーコ時代にはなかなかできていなかったことでもある。

ジーコ時代は、常に最終ラインではひとり余るという原則が強く働き、自然とDFラインは深くなり、しかも、ボールを足元で欲しがるMFが下がってくる。その結果、全体が後退、あるいはFWが孤立して間延びし、なかなかボールは前に進まない。そんな光景を嫌というほど、見せられてきた。

モンテネグロの前線からのプレッシャーが緩かったにしても、ジーコ時代に比べると、センターバックが高い位置でボールを扱えるようになり、サイドバックのポジション取りも高くなっていた。とりわけ、遠藤保仁が中央寄りのポジションを取ったことで、右サイドにスペースができ、駒野がおもしろいようにそのスペースに進出してきた。クロスにも工夫が見られ、その1本が高原直泰(写真)のゴールにつながったのである。

こうした最終ラインからの攻撃の組み立ては、特に、引いて守備を固めてくる相手に対して、絶対に欠かすことができない。ビルドアップの基本形ができつつあるということは、相手が引いてくることが予想されるアジアカップに向け、好材料と言っていい。

ヨーロッパ組の合流に関しては、明暗が分かれた。

ヨーロッパ組ではただひとり、2試合に先発した高原は、キープ力、得点力で優れたところを見せ、FWの軸となるべき存在であることを、あらためて印象付けた。中村俊輔もコロンビア戦に先発し、足を止めずに守備で貢献しながら、攻撃でもチーム全体の流れに乗ろうとしていた。すでに、3月のペルー戦を経験していた両選手は、ともにそこから一歩進んだところを見せてくれた。

問題は、今回がオシム監督就任後初合流となった、中田浩二と稲本潤一である。

コロンビア戦で揃って先発したふたりは、中田が左サイドバック、稲本が中央のMFに入ったが、「人とボールが動くサッカー」のなかで機能したとは言いがたい。中田は無難にこなしてはいたが、攻撃への積極性に乏しく、稲本に至ってはプレイの焦点が完全にボケていた。稲本の場合、不慣れなポジションであったことは事実だが、それにしても、コンディションの問題なのか、動きにキレがなく、あまりに出来が悪かった。むしろ、後半から同じポジションに入った、羽生の存在を際立たせる結果となった。

その羽生が入った後半は、モンテネグロ戦とは別の意味で、非常に価値ある内容となった。高い位置でボールを奪うことができ、攻撃でもダイナミックな動きが多く見られた。

「人もボールも動いていた時間帯は、エレガントだった」

オシムが試合後、そう語ったように、このコロンビア戦はモンテネグロ戦とは対照的に、ボール支配率で劣勢になるような強豪を相手に、いかに日本の特徴を発揮して戦うかを示した試合だったといえる。

ヨーロッパ組を加えたキリンカップの2試合は、現段階で中心となる選手、つまりチームの骨格がはっきりとさせた。現状で、その骨格に加わっているヨーロッパ組は、高原、中村俊の2選手のみと考えていいだろう。その意味では、ヨーロッパ組の合流は期待したほど円滑には進まなかったのかもしれない。

だが、今回のキリンカップは、確実にチームにオシムイズムが浸透し、日本代表が進歩していることを証明した大会となった。

オーストラリアのアジアカップ登録メンバーが発表され、ヴィドゥーカ、キューウェルらを含めた、ベストメンバーが顔を揃えた。日本代表のこの1年での変化を知るには、絶好の相手である。

オシムが監督に就任し、まだ1年足らずとはいえ、日本代表がアジアカップでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。7月7日の開幕が楽しみになってきた。


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