築田 純/アフロスポーツ●撮影 photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT
第35号(2007年3月27日)控え選手のリベンジの場
〜アジア女子サッカー2008北京五輪最終予選〜
メキシコとのプレイオフの末に、ようやく女子W杯の出場権を手にしたと思ったら、4月7日から北京五輪最終予選が始まる。
女子サッカーは男子とは違い、W杯も五輪もA代表で争われるので、先日帰国したばかりの代表チームは、休む間もなくベトナムとの初戦に臨まなければならない。日本は韓国、タイ、ベトナムと同じグループA。8月までの間にホーム&アウェー方式で総当りし、グループ1位が北京五輪への出場権を得る。
女子W杯プレイオフ(3月10日、17日)を振り返りつつ、五輪予選という長丁場を日本女子代表がいかに戦うかを考えた時、ひとつ注目したい点がある。
それは、メキシコ戦で出場機会を与えられなかった選手達が、いかに巻き返すかということだ。
GK山郷。長く代表のゴールマウスを守ってきたベテランだが、昨年夏の女子アジアカップから現在のレギュラーである福元にポジションを奪われた。反応の速さと守備範囲の広さなら福元、安定性とコーチング力なら山郷に一日の長があるが、どちらが先発に起用されても不思議はない。あとは監督の好みの問題になってくる。ちょうど06年男子W杯のドイツ代表で正GKを争った、カーンとレーマンの関係を思い出してもらえればわかりやすいだろう。GKというのは一度固定されるとなかなか変化が起こりにくいポジションだが、山郷はもしもの時に備え、常に気持ちを切らさず万全の用意でいられるのかどうか。
次にDF陣。プレイオフで、周囲を驚かす突然の入れ替えがあったポジションである。下小鶴は指定席であるセンターバックを、昨年末のアジア大会から岩清水に奪われた。岩清水が持つ俊敏さと、味方のFKを頭で合わせる技術を大橋監督が評価した結果だ。しかし下小鶴のように長身と当たりの強さを武器にできるDFは、日本では貴重。自分の長所と足りないところを見つめ直せば、再びポジションを奪い返せるチャンスは大いにあるだろう。
また、少し心配なのが安藤(写真)だ。大橋監督体制発足当初は攻撃的MFで起用されたが、途中から右DFにコンバートされた。彼女の身体能力とテクニックを生かすため、右サイドの二の矢としての期待をかけたのだ。だが攻守の切り替えに悩み続け、思い切ったオーバーラップが出る場面は少なかった。そうこうするうちに今年初頭の代表合宿・遠征で、同じく本来はMFながら右DFで起用された近賀が、安藤を上回る出来を見せた。そしてその勢いを駆って、プレイオフでも近賀が両戦にフル出場。安藤は、控えメンバーにも入ることができなかったのである。プレイオフでの出来を見る限り、現在のところ攻撃的右DFとしては、安藤は旗色が悪い。しかし本来の攻撃的MFとしても、すでに代表の席は埋まっている。安藤に澤の代わりはまだ無理だし、宮間と比べてみても、残念ながら守備力やFKの正確さなども含めた総合力で劣る。果たして岐路に立たされた彼女は、右DFで巻き返しを図るのか。それとも本職のMFとして改めて勝負を挑むのか。おっとりしているように見えて芯の強い性格だけに、彼女の決意の行方は興味深い。
MFでは阪口と中岡が、プレイオフでの出番がなかった。ともに若く、才能溢れる選手だ。しかし阪口には澤、中岡には酒井あるいは宮本という、超えなければならない壁があり、それは非常に高くて厚い。だがいつまでもベテランが幅を利かせてばかりでは、チームの新陳代謝が滞るというもの。勝負が決まった時間帯での場慣れ的起用ではなく、しびれるような凌ぎ合いの中でふたりをプレイさせることで一層の成長を促したいのだが、結果の追求と若手の経験を両立させることは難しい。だが、なでしこリーグの合間を縫いながらのホーム&アウェー戦という強行軍を考えれば、ベテランの疲労蓄積を軽減させる意味でも、思い切って使われる場面はあるのではないか。
アテネ五輪までの丸山は、スーパーサブとしてここぞという場面で起用され、トリッキーなドリブルで観客を楽しませるFWだった。だが今のところ大橋ジャパンでは、控えFWとしても大谷や永里の後塵を拝している。戦術云々より本能でプレイする選手の上、ドリブラーとしては荒川と似たタイプなので、なかなか出場機会に恵まれない。代表における自分の存在意義をどう考え、どうアピールしていくか。あるいは自分のスタイルをどうチームに適応させていくのか。彼女も安藤同様、決断の時を迎えている。
プレイオフで不遇を託った選手達にとって格好のリベンジの場が、五輪アジア予選だ。しかしそれが楽な展開の試合の中では、意味がない。グループ1の強豪、韓国との2戦、あるいはタイやベトナムとのアウェー戦で彼女らが出場機会を勝ち取れるか。しかもそこで監督の考えを改めさせるほどのパフォーマンスを見せつけることができるか。そんな代表選手としてのプライドや意気地の見え隠れを、勝負の行方と同時に追ってみるのも面白いだろう。







