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浅田真樹●文 text by Masaki Asada
戸村功臣/アフロスポーツ●撮影 photo by Atsushi Tomura/AFLO SPORT
第30号(2006年12月26日)
闘莉王、初のJリーグMVP獲得

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 12月18日、今季のJリーグを締めくくるJリーグ・アウォーズが行なわれ、MVPに浦和レッズの田中マルクス闘莉王が初選出された。

 本人も表彰の場で口にしていたが、「この賞をDFがもらうのは、FWよりも難しい」。確かに、ゴールという目に見える活躍ができるFWの方が、印象度という点で優位な立場にいるのは間違いない。過去、得点王とのダブル受賞となったアラウージョやエメルソンなどは、その典型である。

 その点で言えば、今回は得点王を分け合った2人のFWが、MVP獲得への決め手を欠いたことは、DFの闘莉王にとって幸いだった。マグノ・アウベスは単独得点王を逃した上に、優勝も浦和にさらわれたし、ワシントンは優勝した上での得点王獲得だったが、出場試合は全試合の3分の2程度に過ぎず(それでも得点王を取るのだから、驚異的な決定力ではあるが)、チームへの貢献度という点ではマイナス材料となっただろう。

 とはいえ、単純に今季の活躍、チームへの(しかも優勝への)貢献度を考えれば、闘莉王のMVP獲得は至極妥当なものだ。

 浦和のサッカーはポゼッションを高めて攻め続ける、というよりは、しっかりと守備を固めて、そこから前線の選手の個人技をベースとしたカウンターにつなげる、というもの。しかも、その守備もチームとして組織的にプレスをかける、というわけではない。そうした個人能力寄りのサッカーで優勝に至るには、やはり闘莉王の存在が欠かせなかった。ゴール前では絶対的な空中戦の強さで相手の攻撃を跳ね返し、セットプレイを中心に、攻め上がれば、ゴールを奪って帰ってくる。チームが苦しいときほど力を発揮するのが、闘莉王だった。

 そんな闘莉王がわずかに3シーズン前、J2の水戸でプレイしていたことは、今となっては不思議に思えて仕方がない。J2レベルでは、まるで能力を持て余しているかのように、ヘディングで競り負けることはほとんどなく、正確なロングフィードで攻撃の起点になった。DFでありながら、チーム得点王でもあった。

 同時に、日本国籍取得へ具体的に動いたのも、このころだった。

「自分をプロ選手に育ててくれた日本に恩返しがしたい」
 当時、帰化を決意した理由を問われると、そう話していた闘莉王だったが、その言葉は今も折に触れて彼の口から聞こえてくる。だからこそ、“代表”への想いは誰にも増して強い。

 なぜジーコが一度も闘莉王を日本代表に呼ばなかったのかは、今でも謎だが、その間を除けば、闘莉王は順調に階段を駆け上がってきた。日本国籍を取得し、水戸から浦和へ移籍が決まり、五輪代表に選出され、アテネ五輪出場……と、以降の足跡は多くの人が知るところだろう。

 ワールドカップが終わり、オシムが日本代表監督に就任してからは、闘莉王は常にDFラインの中心にいる。Jリーグをスミからスミまで見渡しても、これほどの高さと強さを持つ日本人センターバックを見つけることは不可能だ。しばらく、日本代表における闘莉王の立場が揺らぐことはないだろう。それは J1チャンピオン、浦和でも同じことが言える。海外移籍でもしない限り、今後も闘莉王は浦和のDFラインの中心にいるはずだ。つまり、現在の日本サッカーの、闘莉王に対する依存度は極めて高い。

(すでに忘れている人も多いかもしれないが)ワールドカップが行なわれた06年、そこに出場していない闘莉王が、Jリーグ最高の個人賞を受けたことは、何とも皮肉な結果ではある。だが、浦和がAFCチャンピオンズリーグに出場し、日本代表がアジアカップに出場する07年、闘莉王がさらに幅を利かせている可能性は極めて高い。それほどに闘莉王は他に代えの利かない、大きな存在となっているのである。

 今季のMVPに、これほどふさわしい選手は見当たらない。

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