Special Contents J FOOTBALL
田崎健太●取材・文・撮影 text&photo by Kenta Tazaki
第29号(2006年11月29日)
日本サッカーの大いなる成長〜地域リーグに見る選手層とレベル

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 僕が初めて地域リーグの決勝大会に足を運んだのは4年前、2002年のことだ。元横浜FCで旧知の要田勇一という選手が、静岡FCに加入した。彼のプレイを見に行くことにしたのだ。

 地域リーグは、J1、J2、JFLの下に位置する。関東、東海、関西など各地域リーグを勝ち抜いたクラブが集まって、決勝大会でJFL昇格を掛けてセントラル方式で試合を行なう。

 この年の静岡FCには、要田の他に、元清水エスパルスでブラジル代表経験のあるカルロス・アルベルト・ジアスなど元Jリーガーが3人いた。静岡FCは東海地区代表らしい、パスを細かく繋ぐサッカーを展開。他のクラブとは実力差があり、完全にマークされていた。

 もっとも、力の差があっても勝てないのがサッカーである。脆い守備をつかれて、得点以上に失点を重ねて、JFL入りを逃してしまった。

 当時の静岡FCの攻撃陣に才能が揃っていたことは、数年後にはっきりと証明されることになる。

 要田はセントラル神戸を経てパラグアイへと活躍の場を求めた。2004年からは、J1のジェフ千葉に加入。オシム監督にスーパーサブ的な使われ方をするようになった。もうひとりのFW清野智秋もまた2004年からはJ2の札幌に加入。ふたりの控えFWだった齋藤将基は、中国リーグを経て、今年からヴェルディでプレイしている。

 それからほぼ毎年、静岡FCの試合を見るために、僕は地域リーグ決勝大会に足を運ぶことになった。

 決勝大会は選手にとって負担は大きい。リーグ戦であるのだが、3日で3試合という強行軍、1敗すると取り戻すことは難しい。静岡FCは地力で勝りながらも、守備の乱れで昇格を逃し続けた。

 そして、今年──。
 11月24日から始まる決勝大会で、静岡FCが初戦で対戦したのは、同じ東海リーグの岐阜FC。

 岐阜FCは、今年から静岡FCのいる東海リーグに昇格した。監督は元ヴェルディの名手、戸塚哲也。選手に、元ガンバの小島宏美、元グランパスの森山泰行などの元Jリーガーを揃えていた。

 東海リーグの開幕戦で両チームは対戦し、引き分け。岐阜FCはこの後、勝利を積み重ねる。それを後押ししたのは、ホームゲームでは最低1万人入る観客だった。静岡FCと2度目の対戦は、岐阜FCが勝利。岐阜FCは東海リーグ代表として決勝大会に駒を進めた。

 一方の静岡FC。
 今年から監督に元横浜フリューゲルスの高田昌明が就任した。選手兼任の高田に代わって、実質的に指揮を執るのは、元日本代表の三浦泰年総監督である。

 東海リーグで岐阜FCに苦杯をなめたが、地域リーグの“天皇杯”ともいえる全国社会人選手権で2位に入り、 “ワイルドカード”として地域リーグ決勝大会に滑り込むことができた。

 決勝大会の一次リーグは、3チームもしくは4チームで構成される4つのグループに分かれている。グループ首位の1チームだけが決勝ラウンドに進出することができる。

 静岡FCと岐阜FCは同じグループCに入っていた。前評判から判断すると、この日の試合に勝った方が決勝ラウンドに駒を進める可能性が高い。双方にとって勝利が必要だった。特に東海リーグで勝利のない静岡FCには負けられない相手だった。

 試合開始から、主導権を握ったのは岐阜FC。静岡FCの選手の動きは固さが見られた。小島が中盤の左サイドでボールをキープし、片桐淳至、池元友樹といった小柄ではあるがスピードあるフォワードが走り回り、パスを繋いだ。静岡FCの選手たちは彼らに翻弄されていた。

 静岡FCは前半9分に失点。11分には池元にディフェンスが振り切られ、早くも2点差となった。

 静岡FCは大会直前に、札幌の清野をレンタル移籍で呼び戻していた。清野はJ1でも十分に先発メンバーに入れる力を潜在的な能力を持っている。彼の動きは、他の選手と違っていて、優美である。彼の走り方、ボールのもらい方、ひとつひとつに才能が感じられる。ミドルシュートの強さは特筆すべきものがある。そして、相手の弱点を見つける嗅覚に優れている。

 ただし──。
 清野が、Jリーグでコンスタントに活躍できないのは、これまで起こしてきたピッチの外の騒動だけではなく、ピッチの中でもそれなりの理由がある。

 つまり、優れたディフェンスの選手にマークにつかれると、諦めてしまったかのように、存在が消えてしまう。

 この試合でもそうだった。岐阜FCは攻撃の選手たちがクローズアップされがちだが、センターバックに入った小峯隆幸(元FC東京)と伊藤哲也(元サンフレッチェ広島)、そして平岡直起(元清水エスパルス)らの守備は非常に安定しており固い。清野は、小峯や伊藤の間で満足にボールを触ることさえできなかった。

 前半32分に左サイドからのクロスボールを池元が合わせて3点目。静岡FCは数的優位を保っていたにもかかわらず、易々と点を決められた。圧倒的に力の差があった。

 後半、静岡FCは引き気味の岐阜FCに対して2点を返すが、そこで試合終了。結果、岐阜FCがカタマーレ讃岐、FCMI-Oびわこを破って、12月1日から始まる決勝ラウンドに駒を進めた。

 静岡FCにとって、昨年までの敗戦と今年の敗戦は全く意味が違っていた。

 地域リーグ決勝大会の水準は確実に上がっている。かつての元Jリーガーのほとんどは、プロ契約後、数年で解雇されて、地域リーグに流れてくることが多かった。技術はあるものの、精神面、体力、努力が足りない選手がほとんどだった。そして、そうした選手たちでも救世主になれた。

 今やそうした時代ではない。

 岐阜だけではなく、FCMI-Oびわこもモダンで良質なサッカーをしていた。Jリーグでレギュラーを張った経験のある選手でなければ、地域リーグを勝ち抜く大きな力とならない。小峯や伊藤の姿を見て懐かしく思い、そして日本サッカーの大いなる成長を感じた。

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