Special Contents J FOOTBALL
浅田真樹●文 text by Masaki Asada
photo by YUTAKA/アフロスポーツ
第26号(2006年8月29日)
オシムの就任によって何が変わるのか

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 オシムが監督に就任し、日本代表は2試合を終えた。結果はトリニダード・トバゴ戦、イエメン戦、いずれも2対0で2連勝。だが、相手が相手だったこともあり、現段階で結果をうんぬんすることに、あまり意味があるとは思えない。問題はその内容。新監督の就任により、何がどう変わったのか、である。

 まず驚かされたのは、選手の顔ぶれである。2試合で招集された選手は、25名。しかし、うちワールドカップメンバーとしてドイツに渡っていたのは、わずか7名のみであった。

 この現象を捉え、多くのメディアが“世代交代”という表現を頻繁に用いているが、実際には、それほど年齢的に若返ったわけではない。それでも、新たな顔ぶれに新鮮な印象を受け、彼らに何かを期待してしまうのは、まだ前任者に日本代表の指揮が委ねられていたころから、なぜ彼らをもっと呼ばないのかという疑念が、積もり積もっていたからに他ならない。

 呼ばれるべき選手が正当な評価を受け、集められた。あまりに様変わりした顔ぶれにも、さほど抵抗感を受けないのは、そんな単純な理由があるからであろう。

 そこで思い出すのは、オフトの後を受け、ファルカンが日本代表監督に就任したころのことである。97年のワールドカップ・アジア最終予選を戦った、いわゆる“ドーハ組”へのシンパシーを引きずっていた世論は、当時、ファルカンが選んだ多くの新顔を容易に受け入れることはできなかった。大きく様変わりした顔ぶれに対し、世間には激しい拒絶反応が表れたのである。

 その当時に比べれば、今のところ、新顔への拒絶反応はないに等しい。そこには、日本代表選手を選考するにあたり、格段に選手層が厚くなったという背景があり、必ずしも、前任者の選手選考に対する疑念ばかりが容認の理由ではないだろう。

 とはいえ、ワールドカップで惨敗を喫した日本代表に「もし彼がいたなら……」と思わせるだけの選手――例えば、闘莉王であり、田中達也であり、長谷部誠であり、今野泰幸である――が、今の日本代表に揃っていることは間違いない。つまり、ドイツでの戦いがあまりに不甲斐なかったために、新たなメンバーに期待が寄せられているわけである。

 だが、現段階でのその高まる期待はつまり、マイナスよりはゼロのほうがいい、という程度のものである。彼らはまだ何も成し遂げてはいない。マイナスに終わったワールドカップ組よりはマシ、という、ある意味でネガティブな期待感なのである。

 その意味で、彼らが本当に厳しい視線にさらされるのはこれからである。しかも、オシムが指揮を執るようになり、まだわずかな期間が過ぎたばかりなのだ。

 この2試合を見る限り、オシムが目指すところのおぼろげな姿を見ることはできた。個人的には、そこにこそ日本の目指すサッカーの姿があり、それを実現させるためには、根気強くチーム内に、ひいては日本代表に限らず、日本サッカー界全体に、意識改革が施されなければならないと思っている。

 だが、日本代表において、その輪郭がくっきりと浮かび上がるまでには、まだまだ時間がかかるだろう。千葉がいきなり、今の千葉になったのではないように。となれば、好奇の視線を浴び続ける日本代表は当然、志なかばにして、ネガティブな要素だけが抜き出されて語られる可能性も十分にある。

 名前ばかりが先行し、全面的にオシム歓迎のムードに包まれる現状はどうかと思う。だが、その一方で、目先の試合ばかりにとらわれていれば、オシムが監督に就任したことの本質的な意義を見失いかねない。

 オシムは日本代表で何をしようとし、どこへ導こうとしているのか。やはり、そこをしっかりと見極めなければならない。改めてその思いを強くした、8月の2試合であった。

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