Special Contents J FOOTBALL
浅田真樹●文 text by Masaki Asada
アフロ●写真 photo by AFLO
第25号(2006年8月3日)
日本代表の新たなスタート〜オシム新監督就任

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 日本代表はオシム新監督の就任が決まり、新たなスタートを切ろうとしている。新監督就任までの経過については、不手際もあったが、結果的には期待感も大きく、おおむね歓迎ムードに包まれている。

 そうしたムードの裏には、やはりワールドカップでの惨敗が影響しているのだろう。あの結果を見せつけられれば、新しいものに何かを期待したくなるのは、当然のことだ。とはいえ、過去に対して正しい認識を持たなければ、未来でも結局同じ過ちを繰り返す可能性がある。

 先日テレビで放送されていた、日本代表のドキュメント番組を見ていて驚いた。番組中のナレーション曰く、「トルシエは選手を歯車として扱い、すべての動きをマニュアル化し、個人で判断することを一切許さなかった」。続けて、「それに対して、ジーコは個人に考えさえ、自主性を促したのだ」と。

 果たして、そうだろうか。

 トルシエは確かに、人間性、社会性を含め、選手に対してのアプローチには大いに問題があった。だが、ボール中心の守備という考え方、つまり、個々の選手がボールの状況(ボール保持者が前を向いているのか、後ろを向いているのか、など)を見極め、次の動きの選択をするという点においては、非常に理に適っていた。

 つまり、過剰に見えた組織優先も、個人の判断によって成り立っていたわけである。トルシエは、その判断材料を選手に提供していたに過ぎない(確かに、そこには過剰なほどマニュアル的な要素はあったが)。選手が何も考えずに、すべてをオートマティックにできるほど、“組織的なサッカー”とは簡単なものではない。

 当然、その判断材料を与えるのは、監督の仕事である。とりわけディフェンスに関しては、そこを明確に与えてやる必要がある。それをせずに、個人のアイディアを生かした自由なサッカーとやらが成り立つのならば、監督という職業は必要なくなってしまう。

 要するに組織とは、個人の判断の積み重ねである。状況に応じた選手の正しい判断がなければ、組織的なサッカーなど、机上の空論でしかないのだ。

 そこで、オシムである。

 オシムはジェフの選手たちに、的確な判断をすばやく下すことを徹底して求めてきた。その結果、選手たちは攻守両面で、状況に応じて必要なことを見極める判断力を身につけた。ジェフはしばしば「走るサッカー」と言われるが、その判断を実行に移すためには、当然、豊富な運動量が求められる。走ることはあくまで、副次的な要素でしかない。こうした判断力は、個の能力をうんぬんする以前の、サッカーをする上での基本となる部分である。と同時に、日本が世界と戦う上で、より追求していかなければならない部分でもある。

 ただ、組織が個人の判断の積み重ねの上に成り立っている以上、オシムの目指すサッカーは結果、表面的には、いわゆる“決まりごと”を遂行しているだけにも見えてしまう。それは、選手が正しい判断を下せるようになればなるほど。これまでのトルシエやジーコに対して聞こえてきた声を考えれば、「組織で縛りすぎる」とか、「守備を求めるばかりで個性をつぶす」とか、そんなレベルで語られてもおかしくないサッカーなのである。

 大多数が、単純にジェフのサッカーを「走るサッカー」としてしか認識できていないにもかかわらず、盲目的に「ヨーロッパでも知られた名将だから」という理由だけで、オシムを礼賛しているのだとすれば、結局、同じ失敗を繰り返すことになる。

 オシムの何を評価し、何を期待するのか。

 そこをはっきりさせた上で、オシムが日本代表をどう変えていくのかを見ていく必要があるのだろう。

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