Special Contents J FOOTBALL
浅田真樹●取材・文 text by Masaki Asada
photo by AFLO
第22号(2006年4月27日)
FC東京、薄れた独自のチームカラー

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 Jリーグが開幕し、約2カ月が経過した。

 サッカー界全体の関心がワールドカップに向かいがちなこの時期だが、やはり、日本サッカーの中心軸はJリーグにあるべき。瞬間風速的な日本代表サバイバルうんぬん、ではなく、じっくりと腰をすえて、リーグ戦そのものに注目したいところだ。

 ちなみに、ワールドカップ直前とはいえ、Jリーグの観客動員は昨年に比べ、伸び悩んでいるという。決して喜ばしいことではないが、裏を返せば、 ワールドカップの一時的人気に振り回されてはいないということでもある。Jリーグ的な盛り上がりでいえば、シーズン終盤に向けて、観客は徐々に増えていけばいい。3、4月は、まだまだサッカー観戦には寒い日も多かったし。

 というわけで、この2カ月ほどはひとまず、できるだけ多くのチームを見てみることに努めた。その結果、J1の全18クラブのうち、13クラブを見ることができた。言うまでもなく、J1は浦和、G大阪という東西の横綱に、川崎、鹿島が絡む形で、首位争いは展開されている。これは、チームの完成度や選手個々の能力など、総合力が反映された妥当な首位争いだと思う。

 特に浦和、G大阪は、昨年からさらに大量補強を敢行しており、戦力的な充実は群を抜いている。恵まれた資金を背景に、ビッグクラブとしての地位を固めつつあるというわけだ。これまでは、鹿島、磐田という、かなり小さな都市のクラブがJリーグを引っ張ってきたわけだが、こうした大都市のクラブがリーグの中心をなすということは、正しい、という表現が適切かどうかは分からないが、経済原理からいっても、当然の流れだろう。本来なら、ここに横浜F・マリノスもしっかり絡んでいて欲しいところである。

 現状では、まだまだその兆候にすぎないが、Jリーグも次第にクラブが色分けされていくということだろう。

 色分け、といっても、何もリーグにおける位置づけ、といった意味合いばかりではない。サッカーそのものにも立派なカラーがあり、独自の色を打ち出していくことは、他との差別化を図る上でも、そして新たなファンを獲得する上でも、クラブにとって非常に重要なことである。

 それだけに、今年のJリーグを見ていて気になることがある。FC東京の変貌ぶりが、それだ。

 成績そのものは、それほどひどいものではない。第9節終了時点で、3勝4敗2分けの勝ち点11(10位)。新監督が就任したばかりで試行錯誤が続いている、と考えれば、それにしてはまずまずの数字である。

 だが、気になるのは、その試行錯誤である。

 昨年までのリアクション・サッカーからの脱却を目指し、ポゼッション・サッカーを掲げて招聘したガーロ監督(写真)だが、その采配はかなり揺れている。試合ごとに、フォーメーションは4バックと3バックを行ったり来たり。しばしば、ボランチの伊野波雅彦が“エースキラー”として、マンマークを命じられるように、相手ありきのフォーメーション変更、戦術変更が、頻繁に行なわれるのである。

「相手によって戦術は異なる」

 ガーロ監督自身、そう公言している。ということは、采配が揺れている、という表現自体、実は適当ではないのかもしれない。するとガーロ監督は、このまま相手なりに戦って、勝ち点を拾っていくつもりなのだろうか。

 例えば、リーグ戦の行方を左右するような重要な一戦で、なりふり構わずフォーメーションを変更するなら、まだ分かる。だが、こう頻繁にフォーメーションや戦術が変わっていたのでは、選手にしてみれば、目標地点がまったく分からない。

 今年新たに起用されている、徳永悠平、鈴木規郎という両サイドバックが攻撃力を発揮できれば、昨年までの東京の売り、サイド攻撃を新たな形で魅力にできそうだが、チーム全体の戦い方がギクシャクしているため、彼らも攻め上がるタイミングを容易にはつかめない。試合ごとに、できる試合と、そうでない試合がはっきりしてしまうのである。

 しかも、第7節の磐田戦(3対1で勝利)でようやく、4−4−2で両サイドバックを生かすという攻撃のリズムをつかみかけたかに見えたが、4日後に行なわれたナビスコカップの横浜FM戦(0対2で敗戦)では、再び3−5−2へ。攻守にリズムを欠き、チーム全体がズルズルと後退を余儀なくされた。

 その戦いぶりからは、良かったころの“イケイケ”が姿を消し、どうにも“モタモタ”ばかりが目立って仕方がない。

 今のままなら、“東京色”のシンボル的存在であった、石川直宏がケガから戻ってきたとして、彼はどう生かされるのか。それが具体的にイメージできないどころか、彼の良さが消されはしないかと、不安にさえなる。

 目の前で行なわれているサッカーが、良いか悪いか、好きか嫌いかは、結局のところ個人の判断でしかない。だが、そこには、確実に“東京色”があった。しかも、それは、非常に鮮明な色だったのに……(ただし、その色はどうも“プロビンチャ”的で、首都のクラブとしてはどうなんだろう、という気持ちがなかったわけではないが)。

 些細なことかもしれないが、東京は今年、ホームゲームで選手入場の際にかける音楽も変えている。これも、クラブなりに変化を訴えるメッセージのひとつだったのかもしれないが、個人的にはどうもしっくりこない。“イケイケ”から“モタモタ”への変化とシンクロしているような気がして仕方がないのだ。

 プロである以上、タイトルを取るとか、J1に残留するとかの結果は重要なことだ。それらの結果は、望んだからといって、一朝一夕に得られるものではない。長い時間、努力を続けて、初めて手に入れられるものである。

 だが、クラブとしてのカラーを定着させることは、タイトルを取ること以上に長い時間を要することであり、もっともっと難しいことのように思う。東京は独自のカラーが定着し始めていた数少ないJクラブだったにもかかわらず、せっかくの色を脱ぎ捨ててしまったように思えてならない。

 こういうときには、現在、世界的に見直されている日本の言葉がふさわしい。

 もったいない――。

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