ニッカンスポーツ●撮影 photo by nikkann sports
第29号(2007年9月21日)“ビッグ3”だけじゃない〜高校生ドラフト注目選手
高校通算87本塁打の大阪桐蔭・中田翔、MAX155キロの仙台育英・佐藤由規、そして完成度ナンバーワンの成田・唐川侑己の“ビッグ3”ばかりに注目が集まる今年の高校生ドラフト。各球団とも指名選手数が少なくなることが予想され、全体的に“小粒”という声が専らだ。だが、あのイチローもドラフトでは4位指名だったように、前評判通りにいかないのがスカウティングの難しさ。ここでは、あえて“ビッグ3”以外のスター候補生を紹介する。
今年は内野手に注目の選手が揃った。中でも総合力、実績ともにナンバーワンは、軟式出身ながら横浜で1年春から三塁手のレギュラーを奪った高濱卓也。50メートル6秒0の俊足、遠投120メートルの肩を持ち身体能力は抜群。遊撃手として、三遊間の深い位置から見せる送球は一見の価値がある。昨春センバツの八重山商工戦では、冷静な状況判断で1つの挟殺プレー中に二、三塁間、三、本塁間の2走者をアウトにする離れ業も見せた。打撃は内角球のさばきに課題が残るが、手首を返さず左方向へ打ち返す技術は高校生離れしている。佐賀・城南中時代は全国3位、横浜ではセンバツ優勝と勝ち運を持つのも魅力だ。
高校球界史上に残るスピードスター・熊本工の藤村大介にも注目が集まる。なんといっても一塁まで3.8秒で駆け抜ける俊足が魅力だ。通常は4.0秒台でプロ注目レベル。3.8秒台は阪神・赤星憲広にも匹敵する速さだ。「外野の間を抜けたら三塁を狙う」という積極的な姿勢も買える。打撃、守備に特別なすごみはないが、足を生かした守備範囲の広さには定評がある。現在は遊撃だったが、プロでは二塁、または外野で勝負する予定だ。
もう1人、忘れてはいけないのが福岡工大城東の安部友裕。昨夏の甲子園では肩を痛めて出番がなかったが、最大のセールスポイントはその強肩。遠投120メートルの数字もさることながら、低く速い矢のような球を投げ、肩だけでも見る価値があるといっていいほど。昨秋の九州大会準々決勝の小城戦で久留米球場の場外に消える130メートル弾を放つなどパワーある打撃も魅力だ。さらに安部の最大の長所は人間性。元プロ選手の兄(良寛)を持つ高校の1年先輩・小林大亮(立教大)が「誰に対しても謙虚な上、高い意識と強い意志を持っている」と評価する。昨夏の右肩故障に加え、今夏は大会直前に右足首のじん帯を痛めて高校野球は不完全燃焼。「もう悔いは残したくない。完全燃焼できるように頑張りたい」とプロでの雪辱を目指す。
安部と同様、ケガ(左ひざ違和感)に泣いた福岡第一の橋本駿介も覚えておきたい。昨冬にひざの手術を受け、回復した今夏は福岡県大会で4本塁打。今夏は負担の軽いライトを守ったが、プロでは本来の遊撃手として勝負をかける。
捕手では強肩が売り物の明徳義塾・伊藤光。2秒を切ればプロ注目レベルという中、二塁送球1.85秒は超高校級だ。馬渕史郎監督の指導により、2年生の11月から3月まで捕手を外されたが、その屈辱から這い上がり成長してきた。課題は打撃面だ。
外野手では春日部共栄の斉藤彰吾。1年夏から4番に座ったパワフルな打撃で高校通算52本塁打。打球の速さは強烈で昨秋の埼玉県大会では、浦和北の二塁手があまりの打球のすごさによけてしまったほど。2年秋からは寮に入り体重が7キロアップし、体勢を崩されながらでもフェンスオーバーさせるパワーがつくなど、より怖い打者に成長した。50メートル6秒2の俊足と安定したセンターの守備にも自信を持ち、「中日の福留孝介さんのような3拍子揃った選手を目指したい」と意気込んでいる。
同じ埼玉県の浦和学院・赤坂和幸は変化球に弱いが、ストレートを捉える技術、パワーは出色。帝京の中村晃も打球の速さは超高校級。一塁手としてのグラブさばき、176センチ、82キロの体型に似合わぬ俊足も評価されている。ほかに、先輩のソフトバンク“江川智晃二世”といわれる中井大介も忘れてはいけない存在だ。
投手では左腕に注目選手が集まった。実績ナンバーワンはセンバツ優勝の常葉菊川・田中健二朗。140キロ以上の球速を誇る速球派全盛の中、130キロ台中盤の球速で打ち取る投球が持ち味。腕の出所が見にくい投球フォームと内外角にきっちり投げ分ける抜群の制球力がプロでも通用するか見ものだ。
隠し球的存在が富山・滑川の左腕・竹嶋祐貴。田中同様、球速より球の切れで勝負する。地方でもまれていない上、本格的な指導も受けていないため、伸びしろの大きさに期待がかかる。
台湾からの留学生・福岡第一の郭恆孝(かく・ここう)は荒削りながら140キロ超のストレートが魅力。同じ左腕で外野手として注目される余聖傑(よ・せいけつ)とともに、福岡県大会準々決勝敗退後も台湾に帰国せず、連日下半身強化のトレーニングを行った。プロ入りへの意識は高い。
その他では、甲子園組に高評価の選手が並ぶ。市立船橋の二枚看板・岩嵜翔、山崎正貴、センバツで1試合20奪三振を記録した帝京・大田阿斗里、中田を通算13打数無安打に封じた金光大阪・植松優友、球速は130キロ台ながら切れのある球をコーナーに投げ分ける文星芸大付・佐藤祥万、1年生の夏に甲子園先発マウンドを踏んだ145キロ右腕・酒田南の山本斉、外角へ直球とスライダーを決め、今夏、京都外大西を9回まで1安打に抑えた常総学院の清原大貴ら。甲子園不出場組では常磐大高・菊池保則、東海大仰星・石田隆司、倉敷・津田大樹、鎮西学院・土田瑞起ら右の本格派投手に注目したい。
ドラフトの順位はあくまで現時点での評価。入団後は横一線からのスタートになる。ドラフトで指名される選手たちは、プロに入って満足するのではなく、一軍で活躍するのを目標に頑張ってもらいたい。「やっぱり“ビッグ3”だけで、不作だったな」といわれないためにも……。






