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田尻賢誉●文 text by Masataka Tajiri
小内慎司●撮影 photo by Shinji Kouchi
第19号(2006年8月3日)
【高校野球】主役は駒大苫小牧と八重山商工か〜話題校揃いの甲子園

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 本来ならセンバツで競演するはずだった北と南の話題校が、夏の甲子園の主役になる。

 北は夏3連覇を狙う駒大苫小牧。なんといっても、昨夏の決勝で高校2年生史上初の150キロをマークしたエース・田中将大(写真)の存在が大きい。速球に加え、プロと比較しても一級品といわれる130キロ台のスライダー、フォーク、この夏から多投するようになったチェンジアップなど球種も多彩。田中が万全なら、攻略するのはほぼ不可能といっていいほどだ。不安があるとすれば、体力面。南北海道大会からほぼ一人で投げ切っており、甲子園でも全試合完投できるかには疑問が残る。過去2年と違い、控え投手との力の差が大きいだけに田中が崩れるようだと厳しい。

 ただ、駒苫は決して田中だけのチームではない。昨年から4番を任される本間篤史、昨秋の明治神宮大会でバックスクリーンに一発を放った中澤竜也、春から急成長の1番・岡川直樹、三谷忠央ら打線は昨年より上。走塁、守備時のカバーリングのレベルは全国でも群を抜いており、総合力は非常に高い。問題は春から失敗が目立つバントをしっかり決められるかだけだろう。センバツ辞退の悔しさを夏にぶつけられるか。

 南は離島のハンディを克服して春夏連続出場を果たした八重山商工。春は故障明けだったMAX149キロの大嶺祐太が甲子園での悔しさをバネに“さぼり癖”を改善。走り込みとサーキットトレーニングで連投可能なスタミナをつけた。さらに、サポート役の金城長靖が成長。大嶺ひとりにかかる負担が軽減されたのも大きい。

 集中打が自慢で「毎試合1度はビッグイニングを作りたい」と友利真二郎主将が話す“グルクン打線”は相変わらず強力。センバツで左右両打席からアーチを架けた金城長、羽地達洋、大嶺のクリーンアップはどこからでも本塁打が出る。重さ1.3キロのバットを毎日振り続けてきたパワーはダテではない。また、今夏は3年生が打てないときに嘉数駿、浦崎善樹ら2年生が活躍するなど、全体的な戦力も底上げされている。ナインは「センバツ優勝の横浜に勝てるのは自分たちしかいない」と春に1点差で敗れた相手へのリベンジに燃えている。

 南北の球児の夢に立ちはだかるのが春夏連覇を狙う横浜。センバツ決勝で21点を叩き出した強力打線は今夏も健在。神奈川大会は全7試合で2ケタ安打、チーム打率.434、10本塁打をマークした。1番・白井史弥に始まり、高濱卓也、福田永将、佐藤賢治のクリーンアップ、さらには8番にセンバツでバックスクリーンに本塁打を放った岡田龍明がおり、どこからでも本塁打が出る打線は驚異だ。控えには飛ばし屋1年生・土屋健二もいる。

 投手陣は川角謙、西嶋一記、浦川綾人の大型左腕三枚が健在。川角は招待試合で駒苫を2点に抑えて自信をつけ、西嶋もセンバツ出場の光星学院を8回無失点に抑えるなど春以降安定感を増した。エース・川角がややスタミナに不安があるだけに、他の投手がどこまでバックアップできるか。春夏連覇のカギはそこだろう。

 この3校を追うのが仙台育英、大阪桐蔭、清峰だ。

 仙台育英は宮城県大会決勝で東北との延長15回0対0の再試合を制しての甲子園。力があるといわれながら気持ちの面が弱く、昨夏は準決勝で東北に逆転負け、昨秋は1回戦で松山にまさかの初戦敗退を喫するなど甲子園に手が届かなかった。難産の末、手にした夢舞台だけに、伸び伸びプレイできれば面白い。エース・佐藤由規は2年生ながら経験豊富。リトルリーグ時代には世界大会準優勝に輝いており、大舞台でも物怖じしない強心臓を持つ。打線も1年時から4番に座る清水義貴を中心に力がある。

 大阪桐蔭は大阪大会で4戦連続5発を放った中田翔を筆頭に、謝敷正吾など強打者が並ぶ打線は破壊力満点だ。投手陣も河南シニア時代、謝敷とともに全国優勝を経験したエース・松原靖幸、130キロ台後半の速球を持つ左腕・石田大樹、右ひじ痛で大阪大会での登板はなかったが、春に150キロをマークした中田と質量ともに豊富。素材は抜群なだけに、選手個々が本来の力を発揮できれば恐ろしいほどの力を出すだろう。

 清峰はセンバツ準優勝左腕の有迫亮に加えて、140キロ右腕富尾京平が成長。決勝でも波佐見を完封するなど二枚看板が確立した。広滝航、佐々木伸之の二遊間、佐々木優介のセンターラインの守備も強力で失点はある程度計算できるだけに、春は不振にあえいだ広滝ら打線がどれだけ奮起できるかがカギだろう。

 この他、センバツで3試合13回3分の2を無失点に抑えた横山龍之介を擁する春8強の日本文理、スラッガー・橋本良平、広井亮介、松隈利道に加え、2年生の田村昇大ら新戦力が台頭してきた強打が自慢の智弁和歌山、上田剛史を中心にした強力打線に右肩故障で春の岡山県大会ではベンチを外れたダース・ローマシュ・匡が復活した関西のセンバツ出場組も虎視眈々と優勝のチャンスをうかがう。

 選手では、なんといっても高校通算55ホーマーの愛工大名電・堂上直倫に注目。愛知県大会ではアーチなしに終わったが、四球攻めにも打撃を崩さず14打数7安打で.500をマーク。準決勝では3点差の9回二死無走者から遊撃内野安打で逆転のきっかけを作るなど、何かを起こす雰囲気を持っている。昨年春夏の甲子園では21打数11安打の.524と打っており、大舞台での強さを今年も見せてくれるか。この他では今治西・宇高幸治、投手ながら甲府工の石合翔は非凡な打撃センスに、県岐阜商の武藤大将、1試合3本塁打をマークした如水館・山根真司はパワーに注目だ。

 投手ではMAX149キロの早稲田実・斎藤佑樹。センバツでも延長15回231球を投げたが、今夏も決勝の日大三戦で延長11回221球を投げ切った。四死球や自らの失策でも崩れない精神的タフさも備え、攻略難易度は高い。この他ではキレのある球が魅力の文星芸大付・藤本知宏、145キロのスピードを誇る三重の梅村学人、熊本県大会は故障でほとんど投げられなかったが熊本工の前田慎一郎も140キロ台の速球を持ち覚えておきたい存在だ。

 例年になく話題校が揃った今大会。組み合わせ次第だが、終盤まで盛り上がることは必至だ。今年も、高校球児らしい全力プレイで、最後まであきらめない戦いを期待したい。

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