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谷上史朗●文・撮影 text&photo by Shiro Tanigami
第17号(2006年5月23日)
「日本一」スカイマークからの撤退〜オリックス、大阪ドーム移転

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 昨年から「東京ドーム」と「宮城フルキャストスタジアム」に、今シーズンからは「千葉マリンスタジアム」と「福岡Yahoo!JAPANドーム」に、フィールドシート(各球場、名称は異なる)が設置された。一昨年の球界再編騒動以来、各球団がファンサービスを真剣に考えるようになった結果でもあるが、一方で「球場改革」にどこよりも早く着手していたオリックスが、大阪ドーム買い取りの意向を表明したのは5月初めのことだった。

 約600億といわれる累積債務を抱え、昨年10月に大阪ドームを保有・運営する第3セクター「大阪シティドーム」が会社更生法の適用を申請。この2月に行なわれた財産、営業権の売却先を決める競争入札にはタクシー大手、MKグループの大阪MKが唯一参加したが、同社の運営構想に不確実な点が多いと管財人がこれを却下。その後、同社は大阪市へ買い取りを打診したが、こちらも赤字続きとあって受け入れず。そこへオリックスが、当初の入札下限価格より10億下回る90億で買い取りのメドをつけたという流れだ。

 オリックスが名乗りを上げたことで、球団合併当時からの課題だった借金まみれだった大阪ドームの先行きと、3年限りと認められていた大阪ドーム・スカイマークのWフランチャイズ制の問題も一応の決着となった。しかし、ドームを買い取ったことで、当然、来季からのスカイマークスタジアムでのオリックス主催試合は大幅に減少される予定だ。

 オリックスとすれば90億を払っても、加えてこの先にまだまだかかるといわれる多大な修繕費等を払ってでも、それ以上のビジネスチャンスが大阪ドームにはあると判断したわけだ。しかし、あれほど美しく、観戦時に心地良さを感じさせてくれる球場はほかになく、あの場所で野球を見るチャンスが限りなく少なくなるかと思うと残念でならない。そしてオリックスには、イチローが、松坂が「日本一」と口を揃えたスタジアムで戦うことにもっとこだわってほしかった。

 スカイマークから事実上の撤退発表を受け、オリックス・吉井理人がコメントを出していた。

「スカイマークは練習しているだけで気持ちよくなる日本一のボールパーク。個人的には神戸でやってほしい」

 これが多くの選手の、ファンの、あるいは球団関係者の声だろう。対して思ってしまったのは、オリックスのオーナー、あるいは球団社長らは、ネット裏の「別室」ではなく、スタンドからじっくりと試合を観戦したことがあるのだろうか、ということだ。すっかりファンに定着し好評を博している花火ナイトの美しさや、夏のスタンドで飲むビールのうまさを知っているのだろうか……。

「グリーンスタジアム神戸」がオリックスの本拠地となったのは、球団創設2年目の1991年。以来、各球場のドーム化の流れが進む中で緑の多い美しい球場としてファンにも愛されてきた。特に2000年から始まった「ボールパーク構想」では、同年に12球団のフランチャイズでは唯一の内・外野総天然芝化を実現。続く01年には内外野のフェンスの高さを大きく下げ、スタンドとフィールドとの一体感を大幅にアップさせた。そして03年。「ボールパーク構想」の総決算として国内では初となる「フィールドシート」を一、三塁のベンチ横からせり出す形で設置。抜群の臨場感を演出し、ファンを大いに楽しませてきた。

 その他にもオリックスの選手がホームランを放つとバックスクリーンから炎が上がる「ホームランイリュージョン」、国内初の「Wビジョン」型スクリーンの導入。あるいは、こちらも国内初となる家族で食事を取りながら観戦できるテーブル席、「ファミリーゾーン」を設けるなど、とにかくグラウンドもスタンドもすばらしく仕上がり、まさにこれからだった。

 それがメジャー各球団が球場の屋根を外し、人工芝から天然芝へ回帰を終えようとしているこの時代に、どこよりその視点を持っていたオリックスのドーム移転。神戸で生まれ、神戸で育ち、阪神・淡路大震災の際には「がんばろうKOBE」を合言葉に復興のシンボルとして戦ってきたオリックスの事実上の神戸からの撤退……。残念でならない。

 もちろん「利」を求めることは必要だ。ただ、「損得」だけで動いていると球団はファンの支持を得られない。オリックスは今回の移転によって、いかばかりかの実利を得るのかもしれない。しかし、代わりに球場に詰まった歴史、ファンの思いを失うのだ。そして、オリックスの経営理念そのものといえるスカイマークスタジアムからの撤退は、これまで続けてきたチャレンジに自らの手でピリオドを打つようで、それがまた悲しい。

 オリックス、球団誕生から17年。また一からのスタートを思わせるオリックスにファンはついていけるのだろうか。

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