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田尻賢誉●文 text by Masataka Tajiri
小内慎司●撮影 photo by Shinji Kouchi
第16号(2006年3月22日)
【高校野球】球児の全力プレイに期待〜センバツ展望

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 高校球界ナンバーワン右腕・田中将大を擁して夏春連覇を目指した駒大苫小牧の出場辞退で、本命なき大混戦となった選抜高校野球。そんな中、優勝候補第1グループに入るのは関西、横浜、智弁和歌山の3校だ。

 明治神宮大会準優勝の関西は投打ともに安定している。投手はインド人とのハーフ、ダース・ローマシュ・匡がエースに成長。190センチ、75キロのスラリとした体型から投げ込む速球はMAX144キロをマーク。スライダーとチェンジアップのコンビネーションも覚え、安定感が増した。問題は精神面。昨夏は京都外大西戦で一本調子になり6点リードを守れなかった。それをきっかけに秋は成長したが、それでも「自信を持つとその自信に裏切られたときに何をしたらいいかわからなくなるので、自信は持たないようにしています」と話していたのが気になる。控えの中村将貴は175センチ、58キロの超細身。だが、変化球を内外角に投げ分け、中学時代に公式戦で完全試合を1度、無安打無得点を3度記録。実績と物怖じしない度胸が持ち味だ。

 打線も中学時代にバッテリーを組み全国優勝の経験がある熊代剛と、上田剛史のベース1周14秒5以内の1、3番コンビ、4番・安井一平を軸に好打者揃い。150キロのマシンを打ち、済美同様の鉄バットでのティー打撃で鍛えられている。

 横浜は福田永将ら、入学時から期待されたスーパースター軍団が3年生を迎える集大成の年。渡辺元智監督、小倉清一郎部長ともに優勝を狙っている。自慢は出場66試合で17本塁打の4番・福田を筆頭にした重量打線。16本塁打の越前一樹、9本塁打の下水流昴、核弾頭・白井史弥、1年生春からレギュラーを奪った佐賀出身の高濱卓也などどこからでも1発が出る。だが、1発だけではないのが今年の特徴。昨秋の東海大相模戦では2点ビハインドの9回に5点、常総学院戦でも1点リードされた9回に5点、同点に追いつかれた10回に4点と土壇場で粘り強さを発揮する。スーパースターにありがちな個人技に走らなければ、甲子園でもこの粘りは武器になる。

 問題は投手陣だが、昨秋のチーム防御率は1.81。69試合65勝3敗1分のうち、2敗は4番手の落司雄記で落としたもの。川角謙、浦川綾人、西嶋一記の三本柱が登板して敗れたのは関東大会準決勝の高崎商戦だけだ。飛びぬけた投手こそいないが、180センチ台の左腕を3人も擁する学校はほかにない。不安はむしろ、高濱以外は苦手にしているバントや盗塁といった小技の部分だろう。

 智弁和歌山は伝統の強力打線が健在。中学時代はボーイズナンバーワン捕手の横浜・福田と並び称されたシニアナンバーワン捕手の橋本良平が伸び悩んでいるものの、通算20本塁打の廣井亮介、近畿大会1回戦で2ホーマーの松隈利道など1発を狙える打者がずらりと並ぶ。昨夏の甲子園レギュラーが6人残るのも強みで、「去年からそのまま試合に出ているんだから、強くないと困る」と高嶋仁監督も自信たっぷりだ。問題は投手陣。松隈、竹中孝昇、廣井と3人がいるが、例年同様、継投が基本。頂点への道は、投手陣をどうやりくりするかだろう。

 この3校を脅かす存在として期待したいのが、離島から自力での初出場となる八重山商工、92年夏に西日本短大付を優勝に導いた浜崎満重監督率いる延岡学園の九州勢と秋田商、高岡商の雪国勢。

 八重山商工は個々の能力は抜群。MAX145キロの大嶺祐太を筆頭に金城長靖、仲里拓臣と揃う投手陣は全員が140キロ台を記録する。打線も伊志嶺吉盛監督の「思い切り打て」という指導の下、上位から下位までフルスイング。レギュラー格10人中7人が1発を記録している。練習ではティー打撃から紅白戦まで、すべて1.3キロのバットを使用。平均身長169センチと出場校中最も低い「ちびっこ軍団」だが、ひ弱さはない。左右両打席で本塁打を打てる金城長、昨秋は故障に泣いた本来の4番・羽地達洋、大嶺、チャンスに強い仲里ら役者が揃っている。問題はモチベーション。相手が自分たちより弱いと見るや、手を抜いてしまうなど、相手に合わせた野球をしてしまうため伏兵に足元をすくわれることが多い。一戦一戦、モチベーションを高めて戦えるかが上位進出のポイントだ。

 延岡学園は神宮大会を視察した浜崎監督が「優勝するのは難しいが、神宮4強のチームまでとなら戦える」と手応えを口にするほど自信を持つチーム。右横手から曲球を繰り出す大西靖彦、140キロ近い速球を武器にする山田将吾の投手陣を、守備範囲の広い遊撃・小園雄也を中心とした守備で、盛り立てる守りの野球が信条だ。92年夏の決勝で、相手スクイズを外し、スクイズで決勝点を奪って1対0の勝利を収めた浜崎野球が展開できれば面白い。

 秋田商も甲子園8度目のベテラン・小野平監督が「神宮大会を見て強いと思うチームはなかった」と言い切るほど自信を持ったチームだ。売りは強力打線。東北大会決勝で逆転サヨナラ本塁打を放った佐々木弘史、1年生夏から甲子園を経験する小山田聡太を軸に昨夏の甲子園レギュラー6人が並ぶ。守備面でも、昨夏の遊学館戦で一塁走者として送球を顔面に受け途中退場を余儀なくされたサブマリン・佐藤洋、左手人差し指骨折で控えにまわった捕手・鳥井将と、挫折を味わったバッテリーが甲子園でリベンジをかける。ガンを克服した小野監督の思い切った采配にも注目だ。

 高岡商も昨夏の甲子園メンバーが13人残る。旧チームからのエース細川貴生に加え、140キロの速球を武器にする堀岡直希が台頭。二本柱が完成した。打撃も1年時からレギュラーの有沢渉、昨夏の予選で驚異の打率.765をマークした井上達大を中心に好打者揃い。昨秋の富山県大会では、決勝までの4試合をすべてコールド勝ち。今までの富山勢にない破壊力を秘める。

 その他の注目校は好投手・斎藤祐樹を擁して18年ぶり出場の早稲田実。昨年の慶応フィーバーに続く周囲の盛り上がりと、斎藤の三塁けん制は大きな武器になる。1年夏に甲子園のマウンドを踏んだ前田健太のいるPL学園、昨夏に桑田真澄以来の1年生5勝を挙げ準優勝に輝いた本田拓人(写真)擁する京都外大西、03年夏にエースとしてベスト8に進出した兄・康弘より上といわれる桑鶴雄太の光星学院、俊足に加え左打者ながらレフトに放り込むパワーを持つ今井諒、通算35本塁打の土井健太ら重量打線の履正社、昨夏愛工大名電、済美を破り旋風を起こした清峰など。旭川実も俊足好打の柏倉明人、140キロの速球が魅力の北山大将をうまく使えれば、95年夏にベスト8進出したとき以来の快進撃も可能だ。

 上記以外の好選手は昨春のセンバツで2試合連続本塁打を放った東海大相模・田中大二郎、中学時代成田選抜で全国準優勝投手の成田・唐川侑己、好左腕と騒がれながら神宮大会でKOされ汚名返上にかける岐阜城北・尾藤竜一、昨夏の甲子園で.364、昨秋の公式戦では.659をマークした俊足好打の清峰・広滝航、堂上直倫は不在だったが練習試合で愛工大名電を封じ込んだ金沢桜丘・太田真司、荒れ球ながら投球回数を上回る三振を奪う一関学院の左腕・太田裕哉らがいるが、駒苫・田中の不出場によるスター不足の感は否めない。

 昨夏から大会のたびに不祥事が話題となる高校野球界。暗いニュースを吹き飛ばすような、球児たちの全力プレイに期待したい。

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