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THEピット――特別なSG、特別な前検(競艇特集)

2009_1006_0372  モーター抽選後のピットで、まず目についたのは田中信一郎だった。
 私がピットに入った13:30頃、待機ピットで西島義則と話をしながらも、手を止めずに作業をしていた。
 その後、ボートを離れた田中は、整備士さんに「それ、似合いますね」と、気さくにひと声かけて(帽子の傍に付けていたペンか何かを指して言ったようだった)、さらには傍にいたTVリポーターに軽くちょっかいを出すご機嫌なサービス! ……と、ボートに戻ってきて、しばらく確認作業をしたあと、すぐにブルルンとエンジンを始動した。
 それがピットにモーター音が鳴り響いた最初のものだったが、このモーター音を合図にしたかのように、装着場では急に多くの選手が慌ただしく作業を開始したのだ。
 さながら、合戦の始まりを告げるホラ貝のようだった。
 水面に出ていったのは、その田中と西島がほぼ同時で、試運転一番乗りは、やはり田中だ。これももはやSG前検日の決まり事のようにもなっている。

2009_1006_0258  SG前検のピットには独特の喧噪があるものだが、今日のピットの動きは、いつにもまして激しかった。
 尼崎の装着場は横幅が少し狭いので余計にそういう印象を受けやすいこともあるのだろうが、とにかく目まぐるしく選手たちがそこを行き来する。
 横西奏恵などは、ボートを一度、水面に降ろしながらも、ほとんど間をおかずに、ボートを元の場所に戻して、整備室でのペラ調整を始めていた。
 そうした行動は迷いの表われともいえるのかもしれないが、だからといって少しのマイナス材料にもなりはしない。
 動きの中で、ベストの手順を思いつき、すでに別の動きを始めていたからといって妥協はしてしまわず、それを選択したようにも見えたからだ。

2009_1006_0389  この後、スタート練習は明日のドリーム戦組を一班として開始され、ドリーム戦出場選手に対しては、共同会見も開かれた。
 最初に会見に臨んだのは1号艇の吉川元浩だ。
 受け答えは比較的淡々としており、地元のSGドリーム戦に1号艇で出走することに対する特別な気負いはないようだった。
 足に関していえば、「まだちょっとペラが合ってない」としながらも「まあまあ良かった」と、ある程度の手応えは得られているコメントを出していた。
 足に関するコメントとしては、坪井康晴が「(メンバーみんな)そんなに差はないかな」と言ったほか、今垣光太郎が「みんな、いっしょの感じ」、井口佳典が「班では変わらん感じ」と言っており、あまり差がない状況なのかとも思われた。

2009_1006_0566  ただ、最後に会見に臨んだ松井繁は、他の選手がそうしたコメントをしていることを告げられると、「ん?」という顔になり、こう言っている。
「僕と吉川くんがいいと思いますけど。あとは、ちょっと落ちると思います」と。
 松井の言葉が、真実を言い当てているのかどうかはわからないが、珍しいほどにハッキリした物言いだった。
 そんな松井は、この会見において、とにかく“いい雰囲気”を醸し出していた。
 いや、会見に臨む前から松井の雰囲気は良かったのだ。
 他のメンバーが会見に臨んでいる途中で、松井はギアケース調整を始めていたが(順番待ちのあいだに作業を始める選手は珍しくはない)、それがいつのまにか、ペラ調整になっていた。
 そこで係員の人が、記者会見に出てほしいことを告げると「(残っているのは)俺だけ?」と驚き、笑いながら小走りで会見場に戻ったくらいだったのだ。その場面を見ていて、ああ、今節の松井はいい感じだなあ、と思ったものだった。

2009_1006_0218  いい感じといえば、銀河系軍団もそう。
 記者会見が終わった頃はちょうど、スタート練習の「前半組」と「後半組」のあいだの中休み時間になっていたが、このとき待機ピットでは、山本隆幸、田村隆信、丸岡正典、湯川浩司が集まって、何かを話しながら笑い合っている場面が目撃された。
 私が見たのと時間帯としてはあまり変わらないはずだが、中尾・自称フォトアーティストはこんな会話を耳にしたともいう。
 今日の前検は、雨が降り続ける中で行なわれていたのだが、待機ピットにいてもボートが濡れるため、湯川が山本に「雨がかからんところはないんか?」と訊くと、山本はこう答えたというのだ。
「賞金王、獲ったら、屋根つけてやる」
 う〜ん、男らしい発言!
 それに対して湯川は言ったそうだ。
「……頼むわ」
 さて、今年はまだ、決定戦行きの切符を得ている選手がいない銀河系軍団だが、このダービーでどうなるかが楽しみだ。

2009_1006_0282  決定戦といえば、ドリーム組の井口は、昨年の賞金王ウィナーでありながら、フライング休みのため、競艇王チャレンジカップには出られない。賞金王決定戦に出るためには、このダービーで結果を出すしかない状況になっている。
 ドリーム会見においても、今節に懸ける意気込みを聞かれるとこう答えていた。
「優勝しかないんで! それひとつしかないんで、そこを目指していきます!!」と。
 ――井口らしい言葉だな。
 そう思った私は、井口と同様、F休みがチャレンジCに重なる白井英治の言葉も聞いてみたくなってきた。
 そこで、スタート練習後に声をかけ、「今節に臨む気持ちはどうですか? 賞金王を考えれば、ここしかないわけですが」と訊いてみたのだが、そのとき白井はこう答えている。
「ここしかないのは確かにそうですけど、いつもといっしょです」
 白井の言葉もまた、白井らしい。
 私の質問の仕方も悪かったと反省したが、どの節であってもレースに臨む選手の気持ちは変わらない。
“常に全力投球!”
 それができない選手は、まずこのダービーという舞台に立つことも許されないのである。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)

[競艇特集:2009/10/06 17:55]

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